2020年4月29日水曜日

岡崎武『上京する文學』

すっかり忘れていた。
昨年の10月だったか、はじめてヘリコプターに乗ったのだ。もちろん仕事で、である。東京の海ごみ(そのほとんどがプラごみ)を減らしましょうというキャンペーン動画で海ごみの主な流入口とされる河川を中心に撮影することになり、ともに企画制作を担当する新聞社のヘリコプターに同乗したのである。
羽田を離陸した後、高度規制の関係で多摩川をしばらく遡上して都内に入る。東海道新幹線が見えていたから、おそらく鵜の木から田園調布あたりかと思う。台場から新国立競技場、都庁周辺をまわって、赤羽の水門付近から、荒川を下る。被写体として荒川が選ばれたのは都内の大きな河川で広い河川敷を持っているからだ。そこにはポイ捨てされたプラごみも多い。隅田川は護岸されているし、東京都のキャンペーンなので対岸が他県の江戸川や多摩川だと、それでもかまわないのだが、少し気にかかる。
当日は晴れてはいたけれど、少しガスがかかったような天気で見通しがあまりよくない。一週間先延ばしすればスカッと晴れたのにと、それはもちろん後で思ったこと。
空から眺める東京は小さく感じた。渋滞のないせいもあるけれど、台場~新宿~赤羽~荒川河口があっという間なのである。東京は狭い。
「上京」という言葉にぴんとこないのは、上京した経験がないからだろう。上京者は上京前と上京後というふたつの人生と文化に出会っている。些細なことかもしれないが、この二面性は大きい(と上京経験のない僕は思う)。
本書は「文學」にまつわる上京者の状況を調べ上げている。必ずしも地方出身者に限らないところもおもしろい人選だ。野呂邦暢という名前をはじめて知る。著者が特に力を込めて語っている長崎県出身の(そして上京を経て、長崎を舞台に活躍した)小説家である。
さっそく読んでみた。
著者もそうだが、同世代では奥田英朗も上京者だ。先日読んだ『東京物語』はまさに上京物語だった。

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