2020年4月13日月曜日

間宮武美『僕たちの広告時代』

ずいぶん昔のことだが、『テレビCMの青春時代』という新書を読んだ。
著者の今井和也は、レナウンの宣伝部で「イエイエ」や「ワンサカ娘」を手掛けた方だったと記憶している。主に語られているのは、レナウンと資生堂のテレビコマーシャル。今は亡きふたりのCMディレクターにスポットをあてる。電通映画社(現電通クリエーティブX)の松尾真吾と日本天然色映画(現ニッテンアルティ)の杉山登志だ。この他にも当時、企画制作に携わった者たちが実名で登場する。
広告に限らず、どんな世界にも武勇伝や伝説が多々ある。NHKで放送されていた「プロジェクトX~挑戦者たち」が人気番組だったのも、高度経済成長を経験した日本人の多くが命がけの仕事にあこがれを持っていたからに違いない。トンネルを掘ったり、ダムをつくる方がたいへんな仕事ではあるだろうが、僕自身が広告制作の世界に生きてきたので、とりわけ昭和から平成はじめの「広告時代」に引き込まれてしまう。
広告の世界でいえば、電通という巨人がいて、博報堂がその後を追いかけている。著者は博報堂に中途入社して、サントリーやNTT、東芝などの営業担当として制作にかかわった方だ。一概には言えないけれど、博報堂のスタッフは電通という大きな壁をどう乗り越えるか、ジャイアントをどう倒すかといった強いメンタルを持っていたように思える。あるいは博報堂の制作局の人々と仕事をした僕自身の経験がそう思わせるだけかもしれないのだが。
テレビをはじめとしたマスメディア中心の時代が終わり、デジタルとの融合がすすめられている昨今、著者の遺した「広告時代」が将来の広告にとってどれほどのヒントになるかはわからない。ただ、そんな時代もあったのだという思いがこれからの人たちの心の片隅にあればうれしい。
本書の中で僕がリスペクトしているクリエイティブディレクターの若かりし時代を垣間見ることができた。それだけでもこの本を読んでよかった。

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