2012年12月31日月曜日

今年の3冊2012


昨年に比べて今年はそれなりに読んだと思うのだけれど、如何せん無精でこのブログに書き起こせていない本が数多ある。
それらは来年に繰り越しということでいつの日かひのめを見るときをお待ちいただきたい。
読書メーターには今年の20冊をまとめているが、ここはあくまでこのブログ上でのベスト3を揚げる。

佐々木俊尚『「当事者」の時代』
幸田文『おとうと』
川端幹人『タブーの正体』

佐々木俊尚は立ち行かなくなった現代マスコミの言論分析からマス、ネットを含めた広い意味でのメディア空間の先行きに光を当てている。幸田文は隅田川沿いを歩きながら、ふと読んでみたいと思い立った。『タブーの正体』はおそらくこれからの日本の報道の方向性が示唆されている一冊だと思われる。
2012年も暮れを迎えている。来年はもう少し読み、もう少し書き、ほんのわずかでもいいから何かを残していきたい。

2012年12月15日土曜日

村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011 』


その人と会うともやもやした気分を忘れて、すっかり頭が冴えてくる、そんな友人がひとりいたら人生は幸せだと思う。
かつてそんな友人がいた。過去形でいうのもおかしな話だが、いまは遠くに住んでいて、おいそれとは会えないので便宜上過去形にしただけだ。仕事でいくつも宿題を抱えているときでもその人と会って、散歩したり、お酒を飲んだりするだけで気分がやすらぐ、嫌なことを忘れられる、頭の中がリセットされて、そのあとからいろんなアイデアが湧いてくる。そんな友人だ。
今年の夏は比較的プレッシャーのかかる仕事を任されて、辛い日々を送った。持ち前の、どんなときも達観するゆとりが失われた。こんなとき、あの人に会いたいと思うのだ。
小説家のなかで比較的だけどそんな友人の代わりになってくれるのが村上春樹だ。『1Q84』以降はそれほど読んでいなかったので(おそらく『雑文集』、『やがて哀しき外国語』、『走ることについて…』、『神の子どもたちは…』くらいじゃないか)、打ちのめされた日々から復興するためにまた読んでみようと思った。
実をいえば、インタビューとか対談は好きじゃない。耳で聴けばいいのになんで活字を追わなきゃいけないんだ。それにどんなインタビュアーだって村上春樹に訊くことといえばおおよそ見当はつく。それでも手に取ってみたのには理由がある。
これまで大概の小説は読んできたつもりでいたが、読み残している作品もある。それがどの本か、もうわからなくなってきている。いわば、忘れてしまった読み忘れを思い出すために読んでみたのだ。もし読み忘れがなかったら、次にどの本を再読しようかという見当をつけるため。まあ、そんな思いで読んでみた。
結論をいうと、『アフターダーク』をまだ読んでいないことが判明した。小説以外の作品はあまり積極的に読もうとは思っていなかったが、『アンダーグラウンド』はぜひ読みたいと思った。
このインタビューを読んで、気分がすっきりしたわけではない。やはりあの人に会いたいなという気持ちのほうが大きい。それはともかく次に読むのは『アンダーグラウンド』と決めた。

2012年12月1日土曜日

守屋英一『フェイスブックが危ない』


駒込の西尾中華そばを食べに行こうと思ったんだ。
霜降商店街という豊島区駒込から北区西ヶ原につらなる長い長い商店街の入口にそのラーメン屋はあった(商店街は霜降銀座、染井銀座、西ヶ原銀座、ふれあい通り商店街と微妙に名前が変わる)。
その先は滝野川で都電の停留所がある。いずれにせよ散歩というのは暇だからするわけなので、この豊島区と北区の境目が気になって歩いてしまった。車も通れないような路地が区境になっていたりして、なかなか興味深い。駒込駅の南側は文京区で住所も本駒込となる。むしろこちらの方が駒込で豊島区の方が新駒込なのではないかなどとコマゴメしたことを考えてしまう。
西ヶ原まで来るとつい王子まで歩いてみたくなる(欲をいえば、十条か赤羽まで)。滝野川一丁目から都電の専用軌道に沿って飛鳥山まで歩いた。その先は堀江敏幸が『いつか王子駅で』の中で絶賛した、東北新幹線の高架下まで公道との併用軌道になる。堀江敏幸に言わせるとこの下り坂がもたらす「原初の快楽を満喫できるのは、あの由緒正しい花屋敷のジェットコースターを除いてほかにない」らしい。
この本(もちろん、『いつか王子駅で』ではなく、『フェイスブックが危ない』のほうだ)の筆者はIBMでセキュリティの専門家として活躍されているほか、行政機関などが主催するセミナーで講演を行っている。手慣れた言葉で慎重に対処する、そんな姿勢が感じられる。ややもすれば慎重すぎるきらいがないではない。そんなこといちいち気にしていられるかよとも思う。しかしながら情報セキュリティに取り組む姿勢としてはそれくらいのほうがいい。本書を読んで、おもしろそうだからなどという動機でうかつにアプリを許可しなくなった。
そういえば西尾中華そばはどこかに移転したとか移転するとかで霜降銀座にもう店はなかった。王子まで歩いて都電に乗り、早稲田に出た。ようやくラーメンを食べに来たのだと思い出し、メルシーで400円のラーメンを食べた。