2012年10月9日火曜日

角田光代『三面記事小説』


子どもの頃から毎年夏には南房総を訪れる。
今年も行ってきた。もう2ヵ月前の話になる。旅の思い出は熟成させるといいと村上春樹がなにかのインタビューで答えていたのでちょっと時間をあけてみた。
とはいえ、毎年訪ねる土地は何も変わりばえがしない。ここ2年で大きく変わったのはテレビが映らなくなったことくらいだ。父の実家はだれも住んでいない。住民票のある人間がいなければケーブルTVのサービスも自治体では手配してくれない。中継局からの電波が微妙に届きにくい集落なので、近隣ではケーブルにしている家が多いそうだ。
4日ほどの滞在なのだが、その間テレビとは隔絶される。ラジオを持ち込んで、高校野球の中継などを朝からずっと聴いて日を過ごす。それはそれで悪いことでもない。もちろん新聞もない。スマートフォンや携帯電話でニュースを知る以外に情報的には隔絶された地下の井戸のような場所なのだ。
久しぶりに角田光代を読んだ。実際にあった事件を想像力的にふくらませてフィクションにした短編集だ。この作家の創作手法としては新奇なものではない。そういった意味ではいつもの(以前よく読んでいた)角田光代を越えるものではない。事件の当事者とともに読み手を追い詰めていく手法だ。
千葉から戻って、滞在中4日間にどこに行ったか(外出はほとんど親戚まわりだけど)、何をしたかなどメモをつくった。あわせて、こんど行くときはこれを忘れずに持っていこうというものを書き出した。たとえば新しい石鹸とか、トイレットペーパーとか、掃除機とか。
最近、来年が来るのがはやく感じられるからだ。