2007年6月15日金曜日

坂崎幸之助『坂崎幸之助のJ-POPスクール』

2002年にザ・フォーク・クルセダーズが再結成され、そこに坂崎幸之助が加わった。その頃オンエアされていたラジオ番組をベースに書かれたのが本書でそれまでのぼくの坂崎観は一変した。
アルフィーの坂崎幸之助は実のところあまり好きではなかった。小生意気な文化部的風貌、アイドルフォークという中途半端なポジション。音楽も見た目も苦手なタイプだった。
本書を読みすすめるうちに、彼がフォークソングをこよなく愛する少年だったことがよくわかる。その多感な彼の青春時代、ぼくはといえばまだ小学生だったが、姉の影響で吉田拓郎や赤い鳥を聴いていた。多少の年齢差を度外視すれば同時代を生きていたということになる。
この本は題名のとおり、講義形式でザ・フォーク・クルセダーズ、岡林信康、五つの赤い風船、吉田拓郎、ガロ、古井戸、はっぴいえんど…と続いていく。その講義の合間にアルフィー誕生にいたる坂崎自身の半生が語られる。日本の音楽シーンでフォークソングからニューミュージック、J-POPに至るまでの変遷をたどると、コピーフォークの時代から作家主導の日本的フォークを経てシンガーソングライターの時代へと形が変わってくる。楽曲は70年をピークに反戦ソング、メッセージソングが栄え、72年の吉田拓郎以降大衆化に向かうといった流れが、坂崎の視点で語られるのがなんともわかりやすい。
実はこの本を読んだのは発行された2003年。本棚を整理していたら出てきたのでもういちど読んでみた。フォークはやっぱり、いい。



2007年6月14日木曜日

アドフェスト2007展

汐留アドミュージアム東京。

アドフェストがはじまって10年。その爆発的なクリエーティブがカンヌなど西欧の舞台でも評価され、いまやクリオ賞と並ぶプレカンヌの様相を呈してきた。
今年も3月タイのパタヤで開催され、その入賞作品がアド・ミュージアム東京で紹介された。
TVCMのグランプリにあたるTHE BEST OF TV LOTUSはトヨタ自動車の企業広告Humanity。これは昨年のカンヌでも高い評価を得たので多くを語る必要はないだろう。
今年際立ったのはインドのHappydent Whiteという歯を白くするガムのCM。アイデアとしてはありがちかもしれない、歯の輝きで暗闇をも照らすというもの。ゴールドを受賞した。おそらくはそのスケール感とかばかばかしさが評価されたのだろうが、ぼくは階級差別的な後味の悪さが気になった。神経質になりすぎているだろうか。
毎年突飛なアイデアで驚かせてくれるタイのCMではShera Flexy Boardという天井材がシルバー、小銭も払えるSmart PurseというショッピングカードのCM、そしてさがしものはYellow PagesでというCMが同じくシルバーだった。昨年のグランプリSmoothEも残念ながらシルバー。昨年一昨年ほどのパワーはなかったという印象だが、着実に上位入賞作品の常連になっている。
トヨタ、Happydent Whiteともうひとつのゴールドがオーストラリアの公共広告。子どもは大人を見ていて、その真似をしますよというCMでキャッチはChildren See,Children Doという恐怖訴求もの。
日本からの出品では高橋酒造の白岳15秒が12本シルバーに輝いた。15秒のシリーズはいかにも日本的だ。もうひとつソニーマーケティングのウォークマン/ネットジュークがTHE BEST OF EDITINGを獲得している。
今年は昨年のワールドカップに連動したNIKEのCMなどオーストラリアの躍進が目立ち、アジア的な広告と欧米的な広告が競い合うかたちになったように見える。アジアの広告が今後さらに世界の広告としのぎを削るためには、あまり欧米に引きずられることなくアジア独自のスタイルを突き進んでいくことが大切だと思う。


2007年6月6日水曜日

コピー07TCC広告賞展

汐留アドミュージアム東京。

今年のTCC(東京コピーライターズクラブ)グランプリはサントリーBOSSの宇宙人ジョーンズ。このCMは缶コーヒーというカテゴリーの中だけでなく、広く広告表現として新しさを感じた。宇宙人ジョーンズさえいなければなんてことない日常。その舞台が広告のビジュアルとして新鮮に見せられたことが勝因だろう。
TCC賞の中ではやはりサントリーの黒烏龍茶(ポスター)。「中性脂肪に告ぐ」というシンプルなコピーが王道的な食シーンと相俟って、商品を一気に定番化したように思える。
それとリクルートのリクナビ、山田悠子の就職活動篇(TVCM)。就職活動の当事者ではとっくにないのに、やたらと共感できてしまう。
審査委員長賞のニューバランスジャパン「たいていは、抜かれる。ときどき、誰かを抜く。景色のいい場所では、歩くこともある」、リクルート商品オープン告知「知名度だけは一流の会社で働くより、知名度だけが二流の会社で働きたい」、アースデイ・エブリデイeco japan cup 2006「エコロジーで大儲けする人がいないと、環境問題なんて解決しない」はいずれも秀逸なコピーで審査委員長のチョイスを評価したい。
最高新人賞はユニロードという作業着屋のポスター。「作業着で定食屋に入ったら、ごはんを大盛りにしてくれた」、「作業着で覚えた仕事は、忘れない」などコピーの背後にある企画(ストーリー)がしっかりしている。新人賞は「国の名前は、だいたいスポーツで覚える」とか「46歳じゃない。高校31年生と呼んでくれ」などやはり企画がしっかりしていてこそのコピーが多かった。
多様なメディアを駆使する広告が増えている。表現媒体にとらわれないベースとなる企画の重要性があらためて認識された結果が今年のTCC賞ではないだろうか。


2007年6月5日火曜日

伊藤真『会社コンプライアンス-内部統制の条件』

東京六大学野球がいつにない盛り上がりを見せ、終了した。
今季は斎藤祐樹の活躍もさることながら、後半復調した慶應加藤、3本塁打の佐藤翔など将来楽しみな選手が相応の活躍をした。首位打者は田中幸が逃げ切るかと思ったが、早慶戦の連打で細山田が逆転。1年春からレギュラーの上本も久々に3割をマーク。なんとか高田繁の安打数記録に迫ってほしいものだ。
とまあ野球はともかく、今やコンプライアンスの時代。会社勤めするものとしては少しでも学んでおいたほうがよかろう。というわけで本書。
著者は憲法に造詣の深い方と見えて、コンプライアンスの基本は憲法の精神、みたいなことを頻繁におっしゃる。
それはそれでけっこうなことなのだが、ちょっと難しく感じてもしまうのだ。
とはいえ、アメリカでつくられたサーベンス・オックスレー法(SOX法)がベースになって日本で新会社法やJSOX法がつくられて…みたいな話はそうした知識がなさすぎるものにはじーんと骨身に染み入るのだ。
さて著者も述べているが、日本はヨーロッパ的社会民主主義的な社会とアメリカ型の新自由主義的、自由競争型社会の両方の影響を受けたといわれるが、ここのところ日本は後者の勢力が強くて、なんとも住みづらい世の中になっているような気がする。そういえばフランスの新大統領もアメリカ型をめざしているとか。日本的ななあなあさは決してほめられるものではないけれど、かといって杓子定規な緊張関係もいかがなものかと思うのだ。