2006年2月21日火曜日

重松清『きみの友だち』

去年観た内田けんじ監督の『運命じゃない人』でひとつの物語を主人公を入れ替えて描く手法に感心した。
角田光代の『空中庭園』も主人公が入れ替わる連作短編集だったのを思い出した。
この小説も主人公が替わる連作短編。主人公はそれぞれ作者から「きみ」と二人称で呼ばれる。本当の主役である「きみ」は「恵美」なんだけど、「恵美」の思い出の中のおぼろげな存在たちさえもが「きみ」と語りかけられることで脚光を浴び、生気を吹き込まれた存在になる。そして彼らを追って時間軸を飛びまわり、奥行きのあるドラマを形成していく。
と、まあそんなカタチの小説なんだけど、話が重い。いじめとか障害の話は苦手だ。先もある程度読める(いちばん最後の一篇が必要だったかどうかは別として)。
なのに泣けてしまうのだ。

2006年2月6日月曜日

よしもとばなな『王国その3ひみつの花園』

市川準監督の『あおげば尊し』を観た。小学校教諭のテリー伊藤がやはり教師だった父加藤武を看取る話。静かな人間描写の映像が続き、最後はどうなるのだろうと思っていたけど泣けてしまった。
ところで手もとのファイルの中に『王国その2痛み、失われたものの影、そして魔法』を読んだ形跡がない。読んだつもりになって、その3を読んでしまったのだろうか。読んだような気もするし、読んでいないような気もする。たしかに憶えているのは、ついこのあいだその3は読んだということだ。それだけでもよしとしよう。