2011年11月24日木曜日

奥田英明『オリンピックの身代金』


久しぶりに夢を見た。
江戸川橋のアパートにいて、窓外に警視庁の公安が大勢やってくる夢だ。すべての逃げ場がふさがれた場面だ。
この本の後半でそんなシーンが出てくる。読んだ本のシーンが焼き付いてしまうのもまた久しぶりのことだ。上巻を読んでいるとき、後半はどうなるのだろう、どこかにほころびが見られるのではないかとハラハラしていた。島崎国夫の逃走シーンは何度かあるが、いちばん「無理があるなあ」と思ったのがここだったからだろう。
それにしても昭和39年の光景を描き出すのは相当のエネルギーが必要だったに違いない。たとえ、テレビの普及で映像資料が多く残されていたとしてもだ(建設ラッシュの東京はモノクロのニュース映像として残されている)。そして見た目だけではなく、当時の人びとの、ただひたすら前進するしかなかった時代の心性もよく描いている。
読みはじめたとき、『レディー・ジョーカー』のような印象を受けた。よく調べ上げ、丹念に組み立てられたストーリーであるということだ。時代背景も事件の内容もまったく異なるふたつの物語に共通した何かを感じたのである。
まあ、本の内容のことはどうでもいい。読んでもらえばわかることだ。
以前ここでも書いたように本書の上巻は人に借りて読んだ。下巻は買って読んだ。解説が川本三郎だった。
得した気がした。
蒲田から糀谷、羽田、そして六郷あたりをまた歩いてみたくなった。

2011年11月21日月曜日

寺西廣記『foursqareプロモーション』


今年のプロ野球日本シリーズはソフトバンクの優勝に終わった。中日も中日らしい守り勝つ野球で徹底抗戦したが、最後は投手のコマが足りなくなったようだ。
それにしてもオレ流野球というかオチアイムズというべきか、勝つことに固執した落合野球はたいしたものだ。落合博満という人は内に秘めた闘志を決して表に出すことなく、勝負に徹する。そのスタイルは現役時代から変わらない。派手さはない。パフォーマンスもない。スポーツは結果がすべてであるかのように割り切っている。そのあたりは嫌いじゃない。ただ、選手たちも同じようにクールでいるのはいかがなものかと思うのだ。
7戦すべてを観たわけではないが、気がつくとソフトバンクを応援していた。ワールドベースボールクラシックで活躍選手が多くいたせいかも知れない。残念ながらドラゴンズにはひとりもいなかった。
TwitterやFacebookなどソーシャルメディアをいくつか試しているが、いちばん頻繁に利用しているのがfoursqareだ。スマートフォンの普及でユーザも増えている。
この本はfoursqareを活用したビジネスのヒントを概観しているが、foursqareそのものがまだまだ未開拓なメディアであるせいか、ひととおりの話に終わっている。企業や商店でこう使ってみたらどうだろう的な話にとどまっているのだ。
アメリカでの成功事例の紹介やトータルなコミュニケーション戦略の中でどう活かしていったらいいのかという視点が紹介されればますますfoursqareは盛り上がるだろうと思う。そのためにも今後筆者は孤軍奮闘するより、専門分野の人を集めて共著というスタイルで裾野を広げてみたらいいのではないか。
誤植が多いのは残念だったが、このメディアには大きな期待を寄せている。

2011年11月13日日曜日

吉本佳生『無料ビジネスの時代』


しばらくブログをさぼっているうちに外はめっきり涼しくなってきた。おそらく今月下旬の明治神宮野球大会は厚着をしないといけないだろう。
ブログをさぼっているのは本を読んでいないからではなく、ちょっと文章を書くのが億劫だったからだ。年に何度かこういう時間帯がある。
数日前、仕事場で隣にすわっているI君が、これ面白いですよと文庫を一冊貸してくれた。
奥田英明の『オリンピックの身代金(上)』だった。
作者は元広告会社のクリエーティブだったらしい。そのせいもあってか何人かの著名なコピーライターやアートディレクターが賞賛しているらしいことをI君から聞いた。
この本に関してはまた改めて、ということにするが、なかなかおもしろいのだ。ちょっとした『レディ・ジョーカー』なのだ。あれよあれよという間に読み終えてしまった。で、I君に下巻はあるかと聞いたところ、まだ呼んでる途中だという。仕方なく本屋で買ってしまった。
これは無料ビジネスの世界でいえば、コーヒー1杯目無料ということになる。1杯目無料とおかわり無料とではビジネス的にどう異なるのか、ディズニーランドとUSJのアトラクション無料はどう違うのかとかなど本来なら専門的な本にあたらなければわからない話を実に簡潔にまとめてくれている。けっこう売れてるんだろうな、この本、と思わせる。人間は“無料”には弱いものだ。