2023年10月30日月曜日

大江健三郎『個人的な体験』

昨年夏は3回ほど軽井沢を訪ねたが、今年はコロナウイルス感染症が5類感染症に移行したこともあり、海外からも含め、観光客が一気に増え、宿泊の予約がなかなかとれない。結局今月になって訪れることになった。どうせなら紅葉の季節と思っていたが、10月20日過ぎ頃はまだまだ見頃とはいえない。それでも地元の人に言わせれば日一日と色づいてきているという。さすがに10月の軽井沢は寒い。日中はそうでもないが、日が落ちたとたん冬になる。セーターを持って行ってよかった。
軽井沢に行くとついでに観光する。今回は佐久市内にある旧中込学校を見た。明治8年築の木造校舎で長野県の県宝に指定されている。木の廊下、当時の机やオルガン、教科書などが展示されている。昔の校舎の匂いがする。
帰りに長野に立ち寄って、善光寺にお参りに行った。せっかく信州に来たのだからと、軽井沢で二軒、長野で三軒の蕎麦屋に寄った。食べくらべてみると軽井沢の蕎麦は東京の蕎麦で、長野の蕎麦は信州の蕎麦であることがなんとなくわかる。信州の蕎麦は繊細さより力強さ、質朴さがある。ざるやとろろが主で、つゆも薄く、蕎麦をどっぷり付けて食す田舎風の食べ方をする。信州では蕎麦は生活の一部だったのだと思う。
中学高校時代にほとんど読まなかった本を、大学生になって多少は読まなければと思って、教育学の概論や昭和史、太平洋戦争史などを読んでいた。小説はまったくといってくらい読まなかったが、10代の終わりに突然大江健三郎を読みはじめた。そのきっかけは思い出せない。先輩に読めと言われたのかもしれない。周囲に大江を読む友人はいなかった。
『個人的な体験』は著者自身の体験をベースに書かれている。1963年に大江健三郎の長男が知的障害をもって生まれたことはよく知られている。このブログを書くにあたって、単行本をひさしぶりに開いてみた。そうそう、主人公の名は鳥(バード)だった。

2023年10月12日木曜日

凪良ゆう『汝、星のごとく』

10月になって、ようやく暑さがおさまった。
暑さ寒さも彼岸までとよく言われていたが、昨今のお彼岸はまだ暑い。とにかく7月から9月まで30℃を超え、さらに35℃を超える日々が続くのだ。来年もこんな暑い日が続くのかと思うと今から憂鬱になる。
が、急速に涼しく、さわやかな秋の日になった。これも不思議なことで、居座る夏の太平洋高気圧と大陸からやってくる秋の高気圧は秋雨前線をはさんで、勢力争いをする。その間梅雨時のように雨が続く。今年はそんなこともなく、一気に大陸の高気圧が張り出した(もちろん大気の状態が不安定になって雷雨が続く日もあったが)。それでも日中は25℃くらいにはなる。日なたは暑い。それでも湿度は低く、夏の蒸し暑さはない。朝晩はすっかり涼しくなり、寒いくらいの日もある。
新しい小説を最近読んでいなかった。
どうしたわけか家に本屋大賞を受賞したこの本があった。本屋大賞受賞作品は何冊か読んでいる。『舟を編む』以来かもしれない。いやいや『蜜蜂と遠雷』も読んでいるではないか。作者のことはまったく知らないが、今回の受賞は二度目だという。いつだったかラジオで紹介されていたのを思い出し、せっかくなので読んでみた。
最近の小説はすごいなと思った。両親の離婚でヤングケアラーのように母親と向き合う若者が主人公。ジェンダーについても、カルト教団への献金にも触れられている。ネットで炎上もしている。現代の諸課題が取り上げられている。
ちょっとした恋愛小説であるが、登場する人物のことごとくが不器用な生き方をしている。人間が如何に不完全な生き物であるかが前提になっている。矛盾に満ちたそれぞれの人生が率直に描かれている。
北原という化学の先生に興味を持った。北原先生を主人公にしたサイドストーリーがあってもいいんじゃないかと思った。そうしたら三度目の本屋大賞もありなのでは。いずれにしても読み応えじゅうぶんな作品だった。