2011年7月30日土曜日

井口資仁『二塁手論』


東都大学にすごい選手がいると聞いて神宮に行ったのがもう15年前。
すでに24本の本塁打を放ち、三冠王も経験した東都大学史上最強バッターのひとり井口忠仁である。身体はできているし、パワーもじゅうぶん。ショートの守備も巧い。プロ注目の逸材だった。
その年、秋のシーズンはふたりの遊撃手に注目が集まっていた。もうひとりは東洋大の今岡誠。ともにアトランタ五輪で注目を浴びたが、井口の鋼のようなスイング、アクションの大きな守備などにくらべ、今岡はやわらかいスイングで長打を飛ばす好選手だった。守備も柔軟でスピードがあった。結局そのシーズンは今岡がベストナインを獲得した(優勝は井端弘和がいた亜細亜大学だったが)。
当時神宮で見た井口の印象は豪快な長距離ヒッター。将来的にはプロにすすんでサードか外野手に落ち着くんではないかと思えた。それが意外なことにセカンド…。
野球で二塁手というポジションは身体の流れが逆向きになることが多く難しい。右足を前に出して2塁ベースに送球するとか、一二塁間の打球をつかんで一塁ベースに送球するときも身体をいったん右にひねらなければならないなど、ちょっとしたコツが必要なポジションなのだ。土井正三、高木守道、落合博満など歴代プロ野球の名二塁手と呼ばれた選手にもひと癖ある人が多い。
子どもの頃遊びで草野球をやった程度のぼくがとやかくいう話ではない。ま、いちど名二塁手の道を歩んでいる井口資仁の声に耳を傾けてみよう。

2011年7月27日水曜日

猪瀬直樹『地下鉄は誰のものか』


高校野球東西東京大会はいよいよ大詰め。
西東京は今日ベスト4が決まった。準決勝は早実対佼成学園、日大鶴ヶ丘対日大三。しかるべきチームがしかるべき場所までやってきたという感じだ。それぞれ昨秋新人戦予選敗退チームと秋季大会、春季大会上位校との対戦になった。秋に屈辱を味わった早実、日大鶴ヶ丘の下克上組も楽しみだが、昨秋日大三にコールド負けを喫した佼成学園が春季大会決勝では互角にわたりあったように(結果的には延長で3-7で敗れたが)西東京の1強日大三に各校が迫りつつある。逆にいうと追われる立場の日大三も相当のプレッシャーと戦っているといえるだろう。
東東京は混戦模様だが駒込学園、朋優学園の健闘が光る。春季大会出場校がひとつもないブロックからは青山学院が勝ち上がった。最終的には関東一、二松学舎、修徳、帝京あたりかと思うが、準々決勝で帝京と修徳がぶつかるのは少し惜しい気がする。
で、猪瀬直樹の『地下鉄は誰のものか』。
たしかにそうだ、東京メトロと都営地下鉄はしのぎを削っているわけでもなく、ふつうに共存していて、不便なところ、つまり乗換だの運賃だのに関しては放置されていた。言われてみないと気がつかないことってけっこうあるもんだ。
それにしても地下鉄というのはもともと都市計画のなかでつくられていったのだなとつくづく感心する。言ってみれば郊外電車の山手線内への延長ととらえられるわけで、こうした連続性で考えれば、地下鉄はどこから入れるのかなんて徹夜で考えなくてもいいのだ。

2011年7月24日日曜日

中竹竜二『リーダーシップからフォロワーシップへ』


フォロワーシップという言葉に新しい何かを感じた。
組織はリーダーとフォロワーから成る。一般には強いリーダーのいる組織は強く、リーダーシップに欠けるリーダーが率いる組織は弱いといわれる。カリスマ指導者といわれた元早大ラグビー部監督清宮克幸が退いた後監督に就任した中竹竜二は本人も認めているように(どちらかといえば)強いリーダーシップを発揮するタイプの指導者ではなかった。ところが中竹はカリスマ性がなかったかわりに卓抜した理論を持っていた。
それがこの、フォロワーシップという発想である。
中竹監督率いる早稲田ラグビー部は決して弱くはならなかった。2006~2009年までで大学選手権優勝2回、準優勝1回。まったく恥ずかしくない戦績である。
冒頭「組織はリーダーで変わる」のと同様に「フォロワーで変わる」と打ち出している。この考え方が実に現代的である。個人の持ち味を組織に活かす、そのために今必要とされるのは組織を“あるべき姿”へ引っ張っていくリーダーシップではなく、個のスタイルを組織の中に浸透させ、確固たる組織のスタイルを構築する、いうなればフォロワーを育てるリーダーシップなのだ。
中竹メソッドはこのほかにも、スキルよりスタイルを重視する姿勢、成功よりも成長を重視する見方、できる人とすごい人の差などフォロワーシップを支える独自の視点をふんだんに備えている。後日、あらためて熟読してみたい一冊だ。

2011年7月20日水曜日

村上たかし『星守る犬』


先週の土曜日は高校バレー部のOB会があり、ブログを休んでしまった。
今月は土日が5回ある珍しい月なので、一回くらい休んでもいいんじゃないかとつい気がゆるんでしまった。
で、今日ご紹介するのは村上たかしの『星守る犬』である。
その前にOB会の話だが、例年昼の部、夜の部の2部構成で行われていて、昼の部はOBどうし、あるいは現役高校生らと母校の体育館でバレーボールを楽しむ。夜はしかるべき場所で酒を飲みながら思い出話を楽しむというきわめて立体的な構造のすぐれた会なのである。
ここ数年、ぼくは夜の会に気持ちを集中させるべく、昼の部にはやや距離を置いていた。今年はどういうわけか、バレーをやってみたくなった。たぶん新しいシューズを3年前に買って、ようやく足に馴染んだせいだろう。おしゃれは足もとからというけれどやる気も時には足もとからなのだ。
駅から炎天下の道を歩いて名前も校舎もシステムも新しくなってしまった母校(元母校といった感じか)にたどり着き、3年前に買った新しいシューズを履いて、体育館に入った、数年ぶりに。
『星守る犬』は先月公開された映画の原作になった漫画である。ちょっと哀しい男と犬の物語だ。
実は最近、わが家にも小さな犬がいるので(そのことはまたいずれお話しするとして)、ちょっと冷静に読みとれないところも多々ある。
それはそうとして、体育館に冷房が入っていたのにはおどろいた。

2011年7月12日火曜日

偉関晴光監修『世界最強中国卓球の秘密』


先の週末、神戸で開催された卓球の荻村杯ジャパンオープン男子単で岸川聖也が初優勝した。
中国の一線級選手の参加がなかったものの、コルベル、呉尚垠、荘智淵ら名プレイヤーも参加した大会であり、しかも決勝の相手が水谷隼だったことを考えるとさほどレベルの低い大会とも思えない。しかも松平賢二、荘、丹羽孝希を破っての決勝進出。大きな自信になったに違いない。おそらくは世界選手権の16強から8強クラスの活躍だったといえる。
そして今回4強に残った日本選手の上空に君臨しているのが、中国の選手たちだ。先の世界大会でチャンピオンになった張継科をはじめ王皓、馬琳、馬龍、王励勤、許昕と世界ランキングトップ10に6人をランクインさせている卓球王国である。7月発表のランキングで水谷が王励勤、許昕より上位だったとはいえ、直接対決したら結果はどうなるかわかったものじゃない。中国卓球の強豪選手は単に試合で結果を残す以上のポテンシャルを秘めているような気がするのだ。
そんな中国卓球の秘密を解き明かすべく、卓球仲間のKさんに借りて読んだのがこの本。タイトルからしてベタベタだ。監修者の偉関晴光はソウル五輪の金メダリスト。後に日本に帰化したが、まさに中国卓球の真髄を知る人だ。
さまざまな卓球技術を中国語(漢字)で紹介し、解説を加えている。中国卓球の強さの秘密は微妙な技術の差を表現できる“言葉”にあったのかもしれない。
本書の教えの通り練習したら、卓球も漢字も相当上達するにちがいない。

2011年7月10日日曜日

多根清史『ガンダムと日本人』


関東甲信越地方も今日梅雨明けしたとみられる、のだそうだ。どおりで卓球練習をしていても暑いはずだ。
こう厚くなると散歩に出かけるのも億劫になる。炎天下を歩いて、汗をかき、冷たいものを飲む。まるで「砂の器」の刑事だ。
今歩いてみたいのは、上野から鶯谷、日暮里、田端あたりの台地の縁を上中里、飛鳥山あたりまで歩くコースだ。京浜東北線、山手線はこのあたりでは山の手と下町の境目に沿って走っている。線路の西側はどこも小高い。
逆コースもいいかもしれない。飛鳥山を起点として最終ポイントが鶯谷か上野。だとすれば“しめの蕎麦”は公望荘か、蓮玉庵、池之端藪となるだろう。散歩と蕎麦の話はきりがない。
以前住んでいた町はガンダムの生まれ故郷に近かった。ガンダムのアニメーションを制作したサンライズという会社が近くにあったのだ。杉並北部から練馬にかけては東映動画や虫プロなどがあったせいかアニメーション関係の会社が少なくない。
機動戦士ガンダムはいまさら言うまでもなく、歴史をモチーフに創作された物語だ。ただそれが第二次世界大戦の枢軸国と連合国、みたいな簡単な線引きでは語りつくせぬところにその奥行きが感じられる。もちろんこと細かに検証しようという気にもなれないのだが、ちゃんとやってくれる人が世の中にはいるもので、その著書を手にとることができたのは幸運だったとしか言いようがない。
ザクは零戦だのシャアは小沢一郎だの、その大胆な飛び火の仕方もおもしろい。おそらく著者は、ガンダムさえあれば朝まで飲んで語る人なのだろう。

2011年7月6日水曜日

森鴎外『青年』


甲子園をめざして、東京でも予選がはじまる。
今年は先の震災の影響で春季大会が縮小開催されたため、昨秋の新人戦ブロック予選で敗退したチームはいきなりの予選ということになる。またその影響でシード校を決めずにまったくの抽選で組合せが組まれた。秋季大会出場48校のうち29校が西東京、19校が東東京である。
東を見ると修徳、二松学舎、東海大高輪台、国士舘あたりが一応実績校である。秋16強春8強の修徳がいるブロックには秋春ともに初戦で姿を消した帝京がいる。秋春ともに16強の世田谷学園もここだ。反対側のブロックでは二松学舎が組合せに恵まれた感がある。その下のブロックには国士舘、関東一が接近しており、さらには安田学園、日大豊山と激戦区になっている。いずれ東は抜きんでた学校がないだけに目がはなせない。
一方西は初戦から強豪校同士の組合せが多い。八王子対東海大菅生、聖パウロ対国学院久我山、東亜対実践がそれだ。とはいえ西東京は日大三の力が抜きんでているような気がする。ひと泡吹かせるとすれば、日大鶴ヶ丘、早実のように秋に苦杯を喫したチームではないだろうか。昨秋都立昭和が4強を果たしたが、都立校で安定した力を見せているのは国立か。ただ順当に行って、2回戦で日大二、4回戦で創価か堀越、準々決勝で日大三と甲子園への道のりは険しい。
鴎外の『青年』を読む。
小泉純一は小川三四郎同様、すがすがしい明治の青年である。

2011年7月3日日曜日

佐野正弘『位置情報ビジネス』


foursquareというモバイルコンテンツがある。
GPS機能の付いた携帯端末で自分が今どこにいるか、チェックインする。するとポイントが加算され、バッジがもらえたり、いちばん多くその場所にチェックインするとメイヤーになれる。もちろんバッジはディスプレイに表示されるバッジだし、メイヤーになったからといって収入が増えるということもない。要するにゲームなんだと思って半年ほど前から遊んでいる。
いったい誰が何のためにこんなしくみを考えたのだろうと不思議には思っていたが、さしたる関心もないまま、ただチェックインを続けていた。半蔵門の山下書店にチェックインして、何かおもしろそうな本はないかと思っていたら、この本を見つけた。チェックインしていなかったら見つからなかっただろう。
たしかに自分が今どこにいようがそんなことに関心を持つ者なんていないだろうとは思うが、知ってる人なら気になることもあるだろう。政治家先生が料亭◯◯にチェックインしたと聞けば、少なからず興味は抱く。「いま、◯◯してる」以上に「いま、◯◯にいる」のほうが雄弁なときもある。
foursquareにはTwitterやFacebookにシェアできる。つまりは「いま、ここにいる」という位置情報がそのままつぶやきとなるわけだ。サボっていてもすぐにばれてしまうのだ。この辺は特に注意しなければならない。
で、この本ではそうした位置情報がどのようなビジネスの可能性を秘めているか、みたいなことが書かれている。自分がいまいる場所、立ち位置を把握することは重要なことである。それが地理的な場所であろうがなかろうが。