実家から最寄り駅までは歩くと15分かかった。高校時代はバスで駅まで行った。バスはあまり好きな乗り物ではなかったが、当時はそうする他なかった。大学生になってからは余程のこと(早朝の授業など)がない限り、歩くようにした。母からもらった定期代は煙草代にした。
その後、徒歩3分程の所にJRの駅ができた(奇跡的だ)。かつての最寄り駅までバスに乗ることもなくなった。
大人になってときどきバスに乗りたくなるのは子ども時代のバス乗車体験のせいかもしれない。何度か職場を変え、麹町平河町を仕事場にした。築地や銀座で打合せを終え、時間があると都バスに乗る。銀座通りから日比谷、お堀端を通って会社の近くに停留所があった。気持ちのいい小旅行を味わえた。
会社はその後、築地に移転した。地下鉄で東銀座か築地が最寄りなのだが、時間のあるときは(休日出勤など)東京駅からバスに乗った。これがなかなかいい。丸の内側から出たバスは東京国際フォーラムから有楽町を経て、銀座に出る。晴海通りをすすんで築地の交差点に向かう。車窓から風景を見ると観光客になった気分だ。いっそこのまま勝鬨橋を渡ってみようと何度思ったことか。
この本はたまたまちくま文庫新刊の広告で見つけた。どんな本かもわからなかった。内田百閒の『阿呆列車』みたいな本なんじゃないかと思って読みはじめた。果たして『阿呆バス』だった。
立ち寄った町で、あるいはいつもの駅前で知らない場所に連れてってくれるバスが停まっている。そんなとき筆者は何かもかなぐり捨ててバスという異次元の世界に身を任せる。僕だって駅前に立教女学院とか北野とか行き先表示されているバスが停まっていれば吸い寄せられるように乗ってしまいたいと思うことがある。でもこれに乗ったらテレビで大相撲が見れなくなっちゃうとかつまらない言い訳を思い浮かべて結局乗らない。バスは好きだけど筆者ほどの愛はないんだな、多分。
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