2025年6月2日月曜日

鳥越規央『統計学が見つけた野球の真理 最先端のセイバーメトリクスが明らかにしたもの』

俊足のスイッチヒッター柴田が出塁する。続くはいぶし銀の二番打者土井。巧みに送りバントを決めると王、長嶋へと打順がまわる。期待が高まる。小学生の頃からこんなシーンを何度も見てきた。これが野球の定石だった。
MLBでは二番打者が送りバントをすることは滅多にない。得点期待値というデータがある。特定のアウトカウントと走者の状況でその回にどれだけの得点が見込まれるかを統計的に数値化したものだ。過去のNPBのデータによれば無死一塁と一死二塁では無死一塁の方が得点期待値が大きい。送りバントは有効なプレーではないのである。
かつて二番打者は先頭打者として出塁した走者をスコアリングポジションに送る使命があった。送りバントをしたり、走者の背後にゴロを打って進塁させるのが仕事だった。あらゆる局面で数値化された今の野球で二番打者は走者がいればチャンスを広げ、あるいは得点に結びつけ、走者がいなければ自らが(できれば)長打でチャンスメイクしなければならない。各チームの最強打者を二番に据えるのが今や定石となっている。
打者の評価基準は古くから打率、本塁打数、打点だったが、近年では出塁率+長打率の合計であるOPSが注目されている。出塁率が高いということはアウトにならないということだし、長打率が高いということはチャンスをつくったり、広げることに貢献する。投手も5~6回を100球くらいで投げ切るスタイルに変わってきている。勝利数よりもクォリティスタート(QS)といって、6回を3失点で抑えることが投手の評価基準になっている。
そろそろ高校野球の季節である。犠牲バントをしないチームや複数の投手で継投するチームも以前より増えたものの、負ければ終わりのトーナメント戦で無死一塁を一死二塁にする作戦や頼れるエースに試合を託すスタイルは今もなお甲子園ではよく見かける風景だ。
セイバーメトリクスは高校野球にも浸透していくのだろうか。

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