2014年7月27日日曜日

山本周五郎『さぶ』

江東区の塩浜に映像の編集スタジオがある。
東京メトロ有楽町線の豊洲駅、東西線、都営地下鉄大江戸線の門前仲町駅、同じく東西線の木場駅、JR京葉線の越中島駅、どの駅からも適度に遠い。徒歩にして15分ほどだろうか。普段は木場から歩くことが多い。駅前にイトーヨーカドーがあり、109木場というシネマコンプレックスがあり、ちょっと寄り道したいときには好都合だ。門前仲町から商店街や船宿の前を通りながら歩くのもわるくない。豊洲から歩けば、運河をわたる風が心地いい。距離があるということは楽しみもあるということだ。
時間のあるときは有楽町線の新富町駅や月島駅からも歩いてもいい。
新富町を起点にして、佃の渡し跡のあたりから佃大橋を渡り、佃に出る。豊田四郎監督「如何なる星の下で」で三益愛子はこのあたりでおでん屋を営んでいた。住吉神社の前を通って石川島を隅田川沿いに歩く。かつて人足寄せ場のあったあたりだ。
最近になって、ようやく山本周五郎を読むようになった。
『さぶ』の親友栄二は無実の罪でこの地に送られる。災難に遭いながらもやがて人間不信から脱する。彼を苛みつづけた復讐心から脱却し、人間らしさを取り戻す。
石川島から向こう岸には湊、入船、霊岸島が見わたせる。愚直なさぶは対岸から定期的に栄二に会いにきたのだろう。ほどなく相生橋に出る。何度か通った道ではあるが、『さぶ』を読む前と読んだあとでは景色がずいぶんちがって見える。
相生橋を渡るとそこは越中島だ。東京商船大(今は東京水産大と統合して東京海洋大学という)の構内を散歩する。古めかしい校舎がなつかしい。このあたりの住所は越中島だが、その先にある浜園橋をわたると塩浜。めざすスタジオはそこにある。
さらにその先には越中島貨物駅や東京メトロの深川車両基地などがある。東京駅から地下を走り続けていた京葉線も地上に姿をあらわす。話は尽きないのだけれど、長くなる一方なのでつづきはまたそのうちに。

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