2014年7月11日金曜日

大岡昇平『幼年』

渋谷という町はあまり好きではない。
通学や通勤で通りかかる場所でもなかったし、若い時分から若者の町などというものに興味がなかった。人が大勢込み合う場所が好きじゃないのかもしれない。なかでも好きになれないのはJRのホームの狭さだ。
ターミナル駅としての渋谷は非常によくできた駅で銀座線、、東横線、井の頭線への乗り換えがループ状になっていてスムースに行くよう計算されたつくりになっていると聞いたことがある。それにしても山手線のホームは狭い。
以前の渋谷駅は今の埼京線のホームのあたりにあったのが、その後玉電の発着する現在地に移転してきたという経緯があるらしい。あとから無理矢理こじ開けた駅なのかもしれない。たしかに現在の渋谷駅のまわりは東急関係の建物が圧倒的に多い。
渋谷には地形的にも注目度の高い駅である。青山まで地下を走っていた電車が地上3階にあられる。その名のとおり谷なのだ。宮益坂、道玄坂、金王坂など坂道の道幅も広いので窪地であることがより実感される土地だ。東横線の発着も地下になった。渋谷の谷はどんどん深く削られる。
幼年期から少年時代を渋谷で過ごした大岡昇平の『幼年』にはその川沿いの町が表情豊かに描かれている。
大岡昇平が生まれたのは牛込新小川町、飯田橋駅の近くだそうだが、その後麻布笄町、広尾羽根沢町、氷川神社近辺、渋谷駅近辺、宇田川町、松濤と住み移っている。いずれも渋谷に近く、川が近い。笄川、いもり川など台地から次々と渋谷の低地に集まる。
渋谷川は新宿御苑を源とする穏田川が代々木の方から流れてくる宇田川と合流した後、現在の渋谷駅の地下を流れ、国道246号線を越えたあたりで開渠となる。恵比寿駅付近まで山手線と並行して流れ、広尾から古川橋、一の橋を通り、浜松町で海へと注ぐ。麻布辺りでは古川、芝の方では金杉川とも呼ばれるらしい。都心を流れるこの川は山の手にみごとな下町を形成している。
渋谷の町は好きではないが、渋谷川は気に入っている。

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