2016年10月10日月曜日

山崎豊子『大地の子』

以前、何度目かの再放送でテレビドラマ「大地の子」を視た。
はじめて放映されたのが1995年。日中合作による映像作品はこれまでにいくつかあり、その後も多く制作されているが、このドラマほど中国の政治や民衆の生活などに踏み込んだ作品はないだろう。スタッフや関係者の尽力は相当なものと思われる。
この作品はDVD化されていて、町のレンタルショップで借りることができるが、まだ読んでいない原作に目を通しておこうと思った。
ドラマにも勝る一冊だ。原作を追いかければいいドラマと違って、入手困難な資料や証言を人知を越える努力の末かき集め、わずかに判明した小さな事実というひとつひとつのパーツを丁寧に組み立てて、この中国残留孤児の半生記は描かれている。作者がこの作品に賭けた思いの丈に感服させられる。
中国残留孤児の生活は想像を絶するものだったに違いない。そのなかで陸一心は(もちろん創作ということもあるけれど)、度重なる不幸、不運に見舞われたとはいうものの、幸運な出会いに支えられた。
ひとりは陸徳志との出会い。このほとばしるような人間性を蓄えた小学校教師が陸一心を人として正しい道に導いた。そして親友の袁力本は幾度となく一心の窮地を救う。妻江月梅は命の恩人であるだけでなく、訪問医療で訪ねた寒村で一心の生き別れた実妹あつ子(張玉花)を見い出す。この三人なくして陸一心は存在しえない。
原作を読んでよかったのは、ドラマではつい見逃しがちな日中両国の体制の違い、社会の違い、感覚の違いがひしひしと伝わってきたことだ。中国は1949年の建国から現代にいたるまでさまざまな政治的な変化を経験している。こうした背景を把握しておくことがこの大河小説を読みすすめる上で役に立つ(実名ではないけれどそうした背景も本書でも触れられている)。
山崎豊子が執筆にあたった頃やドラマ制作当時は比較的日中の行き来が緩やかだったのであろうことは想像できるとしてもとにかく圧倒される一冊だ。

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