2016年10月2日日曜日

獅子文六『てんやわんや』

四国に興味を持つ機会がなかった。
『坊ちゃん』を読んでも『海辺のカフカ』を読んでも四国に行ってみたいとは思わなかった。
以前仕事で徳島空港から香川県のとある会社に打合せに行ったことがある。もうその会社の名前も憶えていない。どんな案件の仕事だったかも憶えていない。空港で食べたうどんがおいしかったという記憶だけが残っている。
香川県を中心にさぬきうどんブームがあった。ふだんうどんを食べないにもかかわらず、そのコシやのどごしに魅せられて都内にある名店を訪ねたこともある。もちろん本場でうどん屋をはしごしたい気持ちにもなった。おそらく四国に行ってみたいと強く思ったのはそれが最初だと思う。
最近、吉村昭や司馬遼太郎などを読むようになって、高野長英やシーボルトの娘イネが訪ねた宇和島や坂本竜馬が生まれた高知、秋山兄弟と正岡子規の故郷松山に興味を持った。史跡(とはいっても石に何やら文字が刻まれている程度だろうが)を訪ねてみるのもわるくないと思うようになった。
これまで四国をないがしろにしてきたため、あらためて地図をながめてみると自分の無知に驚かされる。室戸岬や宇和島あたりは地図上どこにあるかと問われたらまず不正解だったろう。子どもの頃から時刻表を見るのが好きだったが、四国の鉄道網についてはまったく知識がない。高松から松山や高知へ行くルートが思い浮かばない。これまで如何に四国を軽視してきたことか。そのとばっちりを今になって受けている。
タイトルの「てんやわんや」から受ける第一印象は、往年の漫才コンビ獅子てんや瀬戸わんやだ。なかでもとりわけ瀬戸わんやの「たまごのおやじゃぴよこちゃんじゃぴぴぴーよこちゃんじゃあひるじゃがーがー」と口角泡を飛ばすギャグはわれわれの世代にはなつかしく印象深いものではないか思っている。
高校時代の親友Tは中学生時代にこの本を読んだという。彼の勤めるC書房でもこの本から「たまごのおやじゃ」を思い出すのはもう彼だけらしい。
宇和島。
いちど訪ねてみたい町だ。

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