2022年2月6日日曜日

島崎藤村『破戒』

新型コロナの新たな変異株であるオミクロン株が猛威をふるっている。
先週東京都では2万人を超える新規感染者を確認する日が複数あった。全国レベルでも過去最多が頻繁に更新されいる。オミクロン株は発症がはやいであるとか比較的軽症で済むなどいろいろ言われている。情報が飛びかってはいるが、本当のところはよくわからない。第5波と呼ばれていた昨年夏から秋にかけてのピークもどうして収束していったのかきちんとした説明を聞いたことがない。
以前にも書いたかもしれない。中学高校時代にほとんと本を読まなかった。今にして思えば、多感なこの時期に(今でも歳なりに多感なつもりではいるけれど)読書体験がなかったことはおそらくその後の人間形成に支障をきたしているのではないかと思うのだが、今のところ自覚症状はない。
島崎藤村がいつの時代の人なのか、作品はどんな傾向なのか。ほぼ知らない。『夜明け前』とを書いたことは知っている。内容は知らない。もう一冊、題名だけ知っている。それが『破戒』だ。著者名と作品名を結びつけて記憶しているだけだ。
士農工商穢多非人という言葉を知ったのは中学か高校の歴史の授業だったと思う。よくわからなかった。具体的にイメージができなかったのである。あるいはそういった可視化されない世界に対して臆病だったのかもしれない。イメージする勇気がなかったのかもしれない。
それにしてもよくできた小説である。
主人公丑松の先輩教師に風間敬之進がいる。士族の出である敬之進は丑松と気心が合う。穢多の丑松、旧士族でありながら没落の道をたどる敬之進。そして旧態依然たる教育界を牛耳る校長、郡視学、町議、そして代議士候補。丑松を敬愛する生徒省吾は敬之進の息子でその姉志保に丑松は心を寄せる。そして親友土屋銀之助。すべてのキャストが機能している素晴らしい作品である。希望の明かりを最後に灯す。
これまで読むことのなかった自分が恥ずかしい。

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