2019年12月13日金曜日

安西カオリ『さざ波の記憶』

9月、東京湾を北上し千葉市付近に上陸した台風15号。
その記録的な暴風が大規模停電や断水など甚大な被害をもたらしたことは記憶に新しい。吹き飛んだ屋根瓦や倒壊した家屋の多くは未だ修復される見込みもなく、ブルーシートを被せられたままだという。とりわけ被害の大きかった鋸南町のようすはときどきSNSで知ることができる。道のりの遠さを感じる。
南房総市白浜町にある父の実家も何枚か瓦が落ちたり、ずれたりし、窓ガラスが4枚割れた。瓦はたまたま通りかかった職人がなおしてくれた。窓ガラスは10月の台風19号に備え、板を打ち付けてもらったが、まだ修繕できていない。
千葉県安房郡千倉町白間津で生まれた母も先月、85歳になった。10月には伯母が、11月には叔母が相次いで亡くなった。母のすぐ上の姉とふたつ下の妹だ。7人いた母のきょうだいもあっという間に母ひとりだけになってしまった。5年前に8歳下の叔父がなくなったときもそうだったが、自分の妹や弟に先立たれてしまったショックは隠しようもない。
イラストレーター安西水丸は、イラストレーションだけでなくエッセイや小説など文章も多く遺している。彼の生い立ちを知るうえで興味深い資料だ。とはいえ本人が書き記したことだけでその生涯を再構築するのは難しく、誰かの証言などあると安西水丸像がより鮮明に浮かび上がる気がする。
安西カオリは、安西水丸の長女である。子どもの目線で見た安西水丸。ふだんあまり父親らしいイメージを周囲に与えてこなかっただけに、これはなかなか新鮮だ。父安西水丸の思い出や千倉町に住んでいた祖母の思い出が語られる。千倉の磯に打ちつける波の音がする。海のにおいが行間から漂ってくる。
安西水丸には兄がひとりと5人の姉がいた。兄はずいぶん以前に他界したそうだが、聞くところによると姉もすでに4人が亡くなっているという。肉親の声は貴重だ。
なんだか湿っぽい話になってしまった。

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