2019年7月26日金曜日

山本周五郎『ひとごろし』

テレビのカラー放送がはじまったのが日本では1960年だという。
昭和天皇ご成婚をきっかけにテレビがいっせいに普及したと言われているけれど、カラーテレビはまだまだ一般的ではなかったようだ。続く国家的イベントである1964年の東京オリンピック時にもカラーテレビは広まらなかった。カラー放送される番組が圧倒的に少なかったからだという。そしてカラー放送が増えはじめたのが68年以降。ナショナルのパナカラー、日立のキドカラーなど各社からカラーテレビが出そろった。
実家の向かいにコウちゃんというひとつかふたつ年上の男の子がいて、カラーテレビを買ったから見に来いという。いつもよりはやめに夕飯を済ませて、コウちゃんの家に行ってテレビを視た。灯りの消された薄暗い部屋で「仮面の忍者赤影」を視た。
赤影は特撮忍者ドラマで赤、白、青の仮面を付けた忍者が活躍する。それまでモノクロテレビで視ていたから、仮面がちゃんと赤白青だと知ったのはコウちゃんと視たその日がはじめただ。ものすごく感動したかというと案外そうでもない。モノクロだろうがカラーだろうがストーリーにそれほど影響はなく、ただ画面に色がついている、程度の感慨だったと記憶している。おそらく67年ごろのことではないか。
父がソニーのトリニトロンカラーテレビを買って帰ってきたのは69年の秋頃だと思う。どうしてそんなことを憶えているかというと最初に視たのが当時の人気アニメーション番組「巨人の星」で大リーガーオズマの褐色の肌が強く印象に残っているからだ。どういうきっかけで、何を思って父がカラーテレビを購入したのか、それはわからないままだけれど。
ここのところ時間があると山本周五郎の短編を読んでいる。
周五郎の短編は名作が多い。とりわけこの短編集は佳作ぞろいで読みごたえがある。
初版は1967年というから、僕が特撮忍者ドラマにうつつを抜かしていたころの作品集だ。

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