2019年6月4日火曜日

ビートたけし『間抜けの構造』

2000年の7月だったと思う。アメリカのテキサスに3週間ほど滞在していた。
メキシコで撮影し、サンアントニオのコンピュータグラフィックス会社でC.G.をつくり、コンポジット(実写映像とC.G.の合成)して帰ってくるという仕事。今ならC.G.のデータのやりとりなどはネットを通じてできるが、当時は高速回線に恵まれていなかったのだろう。コンピュータグラフィックスにしてもハードウェアのスペックが今ほどではなかったのでずいぶん待ち時間が長かったように記憶している。
というわけで撮影、現像、仮編集と、そこまでは連日忙しかったが、C.G.のチェックとなるとほぼ待ち時間になる。することもなく、観光したりする。アラモ砦を見たり、サンアントニオ川沿いの遊歩道を歩いたり、シーワールドでイルカのショウを見たり(どうやって大量の海水をテキサスに運んだのだろう)。独立記念日には近くの(といっても車で2~3時間)広場でウィリー・ネルソンのコンサートを見たり。
ステーキはとっくに飽きて、ありとあらゆる日本料理店をまわった。日本料理といっても、寿司と中華料理と焼肉を供する和食という名の東洋食だ。3週間は長い。
あるとき、プロデューサーとコーディネーター(現地の案内役件通訳)の3人で日本に帰ったら最初に食べたいものは何かなどといった妄想がかった話題で盛り上がった。どこそこのうな重だとか蕎麦だとかいろいろ出てきたのだけれど(これってある種囚人の会話に近い)、満場一致圧倒的多数で支持されたのが銀座共楽のラーメンだった。
共楽は3年前にビル建替えのため長い休業に入ったが、つい先日リオープンした。プロデューサー氏が成田に着いたらタクシーを飛ばして直行したいと言っていた共楽である。
間抜けとは間の悪い人であり、間を見きわめることが難しいことだという。
プロデューサー氏は間の悪いことにトラブルに巻き込まれ、帰国が1日遅れてしまった。

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