2018年12月13日木曜日

山本高史『伝わるしくみ』

仕事場の後輩I君が絵コンテを描くのにiPadを使っている。
人のことは言えないけれど、I君はさほど絵が上手ではない。でもスタイラスペンでササッと液晶画面をトレースする姿はかっこいい。誤解なきよう申し上げておくが、I君はiPadで絵を描いていなくてもかっこいい。
以前からいいなあとは思っていた。「これ便利ですよ、資料とか写真とか下描きを取り込んで、その上のレイヤーにトレースすればいいんですから。先輩くらい絵が描ける人ならずいぶんはかどりますよ」などと言われるとテクニカルなことはよくわからないが、なんだかリスペクトされてるなあと少しいい気分になる。
たまにはクリエーティブの本でも、と手に取ってみる。これはクリエーティブディレクター、コピーライターとしての著者の知見をフルに発揮したコミュニケーションの本であり広告づくりの指南書ではなかった。「伝えること」の難しさを丁寧に説き明かしている。
コミュニケーションには「送り手」と「受け手」がいる。「送り手」は「受け手」を自分が望む方向に動かすために言葉を発する。ところがその意味を支配するのは「受け手」であり、「受け手がすべてを決め」てしまう。
それがコミュニケーションの難しいところ。
たとえば「お疲れさま。朝までかかったんだってね、大変だったね」という労いの一言も「受け手」によっては「すみませんでした、現場の仕切りがなってなくて…」と叱責と捉えられることある。
「送り手」が「受け手」という存在をよく理解したうえで「受け手」のベネフィットになることを伝えられれば、すなわち共有できれば、「受け手」は同意し、「送り手」の思う方向に動き出す。
かいつまんでいえば簡単なことだが、なかなかうまくいかないもの。そのうまくいかない原因をひとつひとつ取り除いていくための方法論がこの本で語られている。
iPadの件はどうしたかというと、いずれゆっくりお話したいと思っている。

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