2018年12月21日金曜日

安西水丸『東京美女散歩』

日比谷公園内の千代田区立日比谷図書文化館はもともと都立日比谷図書館だった。そのせいだろう、二階に東京コーナーがあり、東京関連の書籍が多くある。
青山界隈を拠点にしていたイラストレーター安西水丸は「青山」「東京」と題する著作が多い。そのせいだろうか、このコーナーの書架に何冊か並べられている。
美女をさがす散歩の本といった趣旨であるが、美女とは思い出のメタファーかも知れない。訪ねる町ごとになつかしい時代への思いが語られる。八神純子じゃないけれど、思い出は美しすぎるものなのだ。
あるとき深川門前仲町から佃、月島を歩く。佃島に住む大工の安田さんのことが書かれている。安田さんの住まいは佃や月島に見られる典型的な長屋で二階には別の世帯が住んでいた(昔は二階貸しと呼んでいた)。少年時代の安西水丸は、よく遊びに行っては仕事から帰った安田さんと銭湯に出かけ、西仲通りで少年雑誌を買ってもらったり、子どものいない安田夫婦に可愛がってもらったらしい。
深川から相生橋をわたったあたりにたかさごという肉屋がある。その裏手の長屋に僕の大叔父(母の叔父)が住んでいた(小さい頃は佃のおじちゃんだったが、その後月島に引っ越した)。月島のおじちゃんと銭湯に行き、西仲の本屋で本を買ってもらった思い出がある。おじちゃん、おばちゃんには子どもがなくて、母もそうだが、僕もずいぶん可愛がってもらった。そういえば月島のおじちゃんも大工だったっけ。
偶然ではあるけれど、少年時代の安西水丸と同じような経験を僕もしていたんだなと思うと少しうれしくなる。もしかしたら安田さんは僕の親戚だったのではないかとも思う。だとしたら、月島のおじちゃん、おばちゃんは遠い日の安西水丸に出会っていたことになる。すごいことだと思うけれど、やはり安田さん夫婦と月島のおじちゃん、おばちゃんとは別の人のような気もする。
いずれにせよ、もうみんな他界していてたしかめようもない。

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