2018年12月11日火曜日

伊藤羊一『1分で話せ』

プレゼンテーションというと映像制作会社の場合、広告会社のクリエイティブが広告主に企画のアイデアを説明して、承認を得る儀式みたいなものと考えられている。
制作会社のスタッフはその資料を夜遅くまでかけてつくる。つくってはチェックを受け、修正し、再度チェック…みたいな作業を何度かくり返す。プレゼンテーションに関与するのはその程度のことで自ら壇上に立って、スティーブ・ジョブスのように発言することなど、まずない。
というわけで映像制作会社(言葉はよくないが、下請け会社)のプレゼンテーションに対する意識は低い。「私らプレゼンできませんから」みたいなことを平気で言う。所詮は他人ごとなのである。プロデューサーと呼ばれるリーダー的立場にあってさえ、である。一概には言えないが、映像制作のスキルや意識が低いところほどその傾向は強い。プレゼンテーションとは誰かがやってくれるもの、そのためにお手伝いするものでしかない。
プレゼンテーションがコミュニケーションの相手(受け手)を自分たちが動かしたい方向に動かすことであるという基本的な考えを持ち合わせていないケースが多い。プレゼンテーションというだけでなにやら儀式的な、形式的なシーンを思い描きがちだが、人生だって仕事だって、あらゆるコミュニケーションがプレゼンテーションだ。
相手は誰かを掌握し、まず結論を述べる。そしてその根拠を示す。さらに具体的に、わかりやすく「たとえば」を提示する。相手を動かすためには相手にとってのメリットを語らなければならない。自分たちの努力を語っても人は動かない。この本にはこうしたことが書かれている。他にもどんな資料が有効か、話し方は、など事細かなアドバイスまで詳述されたプレゼンテーションの指南書となっている。題名の『1分で話せ』もみごとな「超一言」になっている。
この本は売れていると聞く。少しは日本もあんしんだと思う。

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