2014年11月25日火曜日

山本周五郎『ながい坂』

下町探検隊という仲間で集まって、ときどき歩く。
先日は浦安青べか探検と称して、浦安を歩いてきた。
東京メトロ東西線の浦安駅で集合し、旧江戸川に浮かぶ23区内唯一の島といわれる妙見島に上陸。旧江戸川沿いに釣り宿を見て、境川沿いを進む。七五三でにぎわう清瀧神社、旧宇田川家、旧大塚家を見学して、浦安市郷土博物館へ。思い思いに写真を撮ったり、せんべいを買い食いしたりしながら日が暮れるまで散策。
実は以前、『青べか物語』読了後、ひとりでふらっと浦安を歩いたことがある。その話を聞いた探検隊のKさんがぜひ行ってみたいということで再び訪れることになったのである。『青べか』に出会わなければ、浦安を歩いてみようなんてきっと思わなかったし、それが気に入らなかったら再訪することもなかったにちがいない。
不思議なことにはじめて訪ねた際に気がつかなかったことが二度目になると気がつくということがある。こんなところに銭湯があったっけ、みたいなことだ。最初の訪問より、二度目の方が精神的に町に入りこんでいるということか。
都内には戦災で被害を受けなかったとか再開発の波にのみ込まれなかったという稀有な町並みがいくつか残っている。浦安は、ところどころに古い町の面影がわずかに残されているものの、やはり都心に近くて便利な住宅地に変貌している。こうした失われていった町の記憶をとどめてくれたのは山本周五郎の業績としか言いようがない。
まだまだ山本周五郎を読みつくしたわけではなく、周五郎ファンだと自認するには若輩者であるが、少しづつ読み重ねていきたいと思っている。そのステップとして『ながい坂』を読んでみる。主人公の小三郎があるきっかけから学問や武芸に励み、立身出世を果たしていく物語である。紆余曲折はあるが、ひとりの武士としてまっすぐに生き抜いていく姿はおもしろいといえばおもしろいし、ありきたりだといえばありきたりだ。ただ悪役も含めて脇がいい。まだまだ読み切れていないのはこれが一回目だからだろう。町歩きのように重ねて読みたい周五郎の一冊だ。
読み終わったときの印象はディケンズの『デイヴィッド・コパフィールド』に近かった。

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