2014年11月23日日曜日

ジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』

とりとりじゃんというじゃんけんがあった。
小学校の頃、たとえば野球(それは後にハンドベースと呼ばれるようになった手打ち野球やゴムボールとテニスのラケットを使ったラケット打ち野球が主だったが)のチーム分けをする。クラスのなかでもうまい者がふたり自然発生的に選ばれ、ふたりでじゃんけんをする。勝った者がそれ以外の者を指名し、チームに引き入れる。プロ野球でいうドラフト会議の子ども版みたいなものだ。当然のことながら実力的に上位の者が順番に選ばれる。その際、人格的にすぐれているとか、金持ちの息子であるとかはまったく考慮されない。
ひどいときは奇数人いるときだ。残ったひとりをめぐって最後のじゃんけんをする。そいつが足手まといになるようなら、勝った方は容赦なく「いらない」という。子どもって残酷な生き物だったんだなと、当時を回想するが、子どもだから許される世界でもある。もちろん当時、僕らの少年時代にだって平等が善で差別が悪みたいな教育思潮はあったにもかかわらず、である。
当時よく読んでいたのは伝記ものが多かったが、小学校の高学年頃からは冒険ものが多くなった。スティーヴンソンの『宝島』、スウィフトの『ガリバー旅行記』、そしてヴェルヌの『十五少年漂流記』など。子どもの頃だったから「荒城の月」の土井晩翠がスティーヴンソンを捩って付けられた名前だったとか、ガリバーが社会風刺の本だなんてことはぜんぜん知らなかった。
ヴェルヌの『十五少年』は何度も読みかえした一冊で他にも『海底二万哩』など空想科学的な作品も読んだと思う。ドストエフスキーの新訳で話題になった光文社の古典新訳シリーズに『八十日間世界一周』が出版されているのを知って、もう大人なのに手にとってみた。
期待通りに奇想天外な物語だが、よくぞこれだけの世界事情を調べ上げたものだと感心した。子どもの頃読んだとしても、きっとそんなことまで気がつかなかっただろう。
沢木耕太郎『深夜特急』と続けて読んで時代を超えた世界一周半も悪くないと思った。

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