2023年4月17日月曜日

夏目漱石『道草』

最近、夏目漱石を読んでいるのは、Kindleで無料だったりするからである。
そう遠くない将来、僕は年金生活を余儀なくされる。今のうちから倹約できるところは倹約したいと思っているのである。図書館も最近になって利用するようになった。ウォーキングついでに立ち寄れる図書館が近隣に多い。今までは音楽CDばかり借りていたが、読みたい本があれば検索して、予約するようにしている(これがなかなか順番がまわってこないのである)。もちろん仕事で必要な本は、今のところ資料代として精算できる。資料として読む本は味気ないものが多いが、たまにすごくおもしろいものに出会える。また楽しからずや、である。
先日、無料本のなかに『ジャン・クリストフ』があるのを知った。ロマン・ロランの大長編小説である。大学生になったばかりの頃読んだ記憶がある。翻訳もそのとき同じ豊島与志雄である。たしか岩波文庫だったと思う。年金生活後、読む本としてチェックしておく。
『道草』は漱石の自伝的小説といわれている。そういわれても、漱石の生涯なんて、教科書の日本文学史程度の知識しかない(しかもほぼ忘れている)。
ロンドンから帰った主人公健三は駒込に住む。兄は市谷薬王寺町に、姉は津の守坂に住んでいる。案外近い。四谷から牛込、早稲田あたりは当然のことながら、漱石のテリトリーである。この辺りはよく歩いた。知らず知らずのうちに散策していたのだ。
ただでさえめんどくさい人間である健三は、養父のことや細君の父のことでめんどくさい日々を送る。めんどくさい主人公が登場するのは漱石の小説では決して珍しいことではない。この作品が自伝的小説で健三が漱石であるとするならば、胃をやられてしまうのもさもありなんと思う。
四谷の荒木町や市谷台あたりも昔はよく歩いた。余丁町から西向天神も永井荷風の足跡をたどって歩いたものだ。そうした町並みをなつかしく思い浮かべながら読み終えた。

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