2019年4月10日水曜日

ダグ・スティーブンス『小売再生 ―リアル店舗はメディアになる』

仕事のために読む本がある。読まなければならない本とでも言おうか。読まなければならないということもない。読んでおいた方がいい、くらいの本である。
たとえばほとんど知らない業種の動画シナリオを頼まれたりする。ネットで基本的な情報やニュース記事を集めて読んでも身に入らないことがある。そんなときに当該業界を扱った話題の本を読んでみる。ネットの記事や動画を見てもピンと来なかったものがうすぼんやりではあるけれどカタチになってくる。そういうことがたまにある。
とはいうものの、「仕事で読まなければならない本」という概念がかっこわるい。やらされている仕事、やる気のしない宿題みたいな感じがする。そこに自主性が欠けている。好きでもないものに、興味のかけらもないものに費やす時間が嫌いなのだ。その一方で、不本意な仕事でもよろこんでこなすことが大人である。いやだいやだと言いながら一日中本を読んでいる。いつまでたっても大人になれない。それもまたかっこわるい。
正直に言って、リアル店舗がネット通販に凌駕されようが、壊滅させられようがどっちでもいいと思っている。さしたる興味はない。先日読んだ『リアル店舗の逆襲』は最新のテクノロジーを駆使してお店を再生させようという、どちらかといえばテクニカルな内容の本だった。今回読んだこの本は違う。ネット通販の圧倒的な破壊力をきちんと分析した上でリアル店舗のネクストを切り拓こうとしている。
いまだに活気のある商店街が東京にもいく箇所か残されている。足を運んでする買い物の楽しさがある。そんな町を歩くと少しばかり元気になる。昔ながらの商店街がいきなりメディアになることは難しいだろうが、人を寄せつける力のある限り、リアル店舗は可能性を秘めている。
というようなことを思い描きながら読みすすめる。仕事で読まなければいけない本の中身がいつしか自分ごと化してくる。
少し大人になったような気がしてくる。

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