2015年1月3日土曜日

井上靖『猟銃・闘牛』

あけましておめでとうございます。
今でこそ月に何冊かの本を読むことを習慣にしているが、子どもの頃はほとんどといっていいくらい本を読まなかった。それでも小学校の頃はまだ偉人伝とか、アルセーヌ・ルパンとか宝島とか人並み程度に本は読んでいたと思う。中学高校と進むにつれ、活字離れははなはだしくなり、夏休みに宿題にされた課題図書すら読まずに感想文を書いていた(たぶん読んでも読まなくてもろくな感想は書けなかっただろうと今になって思う)。
その頃、例外的に読んだのが井上靖だった。
どういうきっかけだったが憶えていないが、たしか『天平の甍』、『額田王』、『楊貴妃伝』、『蒼き狼』あたり。古代の日本や中国の物語に関心を持ったのだろう。『しろばんば』も読んだ記憶がある。続編ともいえる『夏草冬涛』をいつか読もうと思ったまま今に至っている。
「電通報」という大手広告会社の発行する広告業界のニュースや情報を掲載する広報紙があって、最近ではオンライン化されているのだが、そのなかに「電通を創った男たち」というすぐれた連載がある。そこで取り上げられたプロデューサー小谷正一が井上靖の芥川賞受賞作「闘牛」の主人公であることを知った。こういうことがわかってしまうとどうしても読みたくなってしまうのだ。
歴史ものや自伝的作品しか知らなかったせいもあって、ずいぶん新鮮な印象を受けた。久しぶりに読んだせいもある。詩的な文章がスムースに飲み込めなくて、ちょっと難儀した。
井上靖はのちに『黒い蝶』、「貧血と花と爆弾」でも「闘牛」のモデルとなった小谷正一の仕事を小説化しているという。よほど小谷の仕事が気に入ったのだろう(小谷正一は伝説的な人物で多くの著作が残されているという)。
さて2015年はどんな物語に出会えるのか。あせらず、ゆっくりと読んでいきたいと思っている。
本年もよろしくお願いいたします。

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