2010年7月24日土曜日

オノレ・ドゥ・バルザック『ゴリオ爺さん』

「フランス文学 24人のヒーロー&ヒロイン」と題されたNHKラジオフランス語講座応用編でフランスの名作を紹介している。なかなかすぐれた読書ガイドだ。
先日、いつだったか2週にわたって紹介されたのがバルザックの『ゴリオ爺さん』。「ゴリオ」という名前はどことなく昔のアニメーションのガキ大将のような響きがあり、ゴリラのような風貌のやんちゃな爺さんを想像していた。人間ってやつはなんてに勝手な想像をするのだろう。
ところがどうして、ゴリオ爺さんは朴訥で、働くことだけが取柄で、娘たちを溺愛し、にもかかわらず看取られることもなく世を去るこの上ない不幸を身にまとった老人だ(もちろん娘がふたりいる父親としては共感せざるを得ない部分が大いにある)。
残念ながら、ゴリオ爺さんはわんぱく爺さんではなかった。そういった意味ではぼくはこの小説に裏切られたのであるが(勝手に思い込んでいて裏切られたもない話だが)、それ以上に他の登場人物がこの物語を盛り立てている。とりわけゴリオ爺さんと同じ下宿ヴォケー館に住むラスティニャックは立身出世をもくろむ地方出身者で主役といってもいい存在である。このほかにもひとくせもふたくせもある人物が登場する。バルザックはどうやら登場人物を使いまわす作家であるらしい。機会があれば別の作品でこれら登場人物に出会いたいものだ。
親というのはいつの世も子どもたちに裏切られているのかもしれない。裏切られた親がかつてそうだったように。

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