2005年3月12日土曜日

よしもとばなな『ハゴロモ』

実を言うとぼくがいちばんうまいと思っているインスタントラーメンはサッポロ一番である。どれも同じように見え、同じような味のするなかでサッポロ一番だけがもっちりとした食感をもち、スープにからむ存在感のある麺なのだ。ちなみにそのなかでもみそ味が一番だと思っている。塩とみそのミックスというのはいまだ試したことがない。
こんなくだりがあった。

>>人の、意図しない優しさは、さりげない言葉の数々は、羽衣なのだと私は思った。いつのまにかふわっと包まれ、今まで自分をしばっていた重く苦しい重力からふいに解き放たれ、魂が宙に気持ちよく浮いている。<<

ここだけでもこの本を読んでよかったと思った。
本人があとがきで言っているようにこれといってストーリーのなかに大きなうねりはないけれども、淡々と流れる北国の川のようなすぐれた(というかぼく好みの)おとぎ話だ。
登場人物は相変わらずで、母親が若死にしていたり、父親が事故で亡くしてしまっていたりなのだが、おそらくよしもとばななのすぐれているところは人物の描き方より人間関係の描写が巧みなことなんじゃないかと思っている。だからちょっと複雑な家族だったとしても、それがまどろっこしくないのだろう。
とにかくすべてがさりげなく進んでいく。無理なく人と人が出会い、つながっていく。そして癒されていく。よしもと小説にはよく川が描かれるけどこれほどまで川の流れのようにやさしくさりげないストーリーはいままでなかったような気がする。
(2003.4.9)

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