2020年6月13日土曜日

橋口幸生『言葉ダイエット』

人のことは言えないが、まわりくどい話し方をする人がいる。
つまり、こういうことですよね、と簡単に話せばいいものをつまりああだのこうだの物理的には不可能だけれど個人的にはきらいではないなどとよくわからないことを平気で延々と話す人がいる。人のことは言えないが。
以前同じCM制作会社に話の長い(というかくどい)プロデューサーがいた。ロケ撮影時に誰よりもはやくトランシーバーのバッテリーがなくなることで知られていた。
文章においても同様で、言いたいことを書いているのか相手のご機嫌を伺っているのか、なにをねらいにしているのか、わからないことをくどくどと平気で書く人がいる。くどいようだが、人のことは言えない。
くどい文章は、嫌いじゃない。新しい新曲とか、何卒どうかよろしくお願い申し上げます、などと言われたり、書かれたりすると、ああこの人は一生懸命伝えようとしているんだなと思う。日々そうやって、できないながらも、不器用ながらも必死でことばを紡いでいるのだなと思う。けして悪いことではない。
ただ、広告文案やスピード感を必要とされるビジネス文書の世界ではあまり好まれないようだ。そこで本書にあるようにできるだけ無駄を省いて、端的に伝わる文章を心がける必要がある。タイトルは言葉ダイエットとあるが、厳密にいえば、文章であるとか論点を整理して、ダイエットせよという主旨であり、言葉そのものをダイエットすることでもない。文章ダイエットではありきたり過ぎて、手にしてもらえないと著者は思ったのかもしれない。的確かどうかは別として、言葉ダイエットの方が興味をそそる(広告制作者は、こうした表現をエッジが立った言い方とか、キャッチーな表現などと言う)。
経験豊富なコピーライターによってポイントがよく整理されており、勉強になる。あまりくどくどと感想を述べるとこの本のよさも伝わりにくくなると思われるので、この辺でやめておく。

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