2019年5月29日水曜日

吉村昭『月下美人』

 JR中央線の飯田橋駅ホームが200メートルほど市ケ谷寄りに移されるという。
飯田橋駅はその昔水道橋寄りにあった飯田町という駅(貨物駅として1991年まであったというから驚きだ)とこんど移設されるあたりにあった牛込駅が統合されて、つまり真ん中をとってできたという。無理矢理(でもないだろうが)つくられた駅のせいか、線路のカーブしたあたりにホームがある。電車到着のたびに列車とホームの間が大きく空いているところがありますのでご注意くださいとアナウンスされる。とりわけ水道橋寄りでカーブが大きい。そこで少し市ケ谷寄りに移して、列車とホームの間の大きく空いているところをなんとかしようというのだろう。2020年のオリンピックまでの完成をめざしているという。
市ケ谷駅方面から濠端をしばらく歩くと牛込橋の下から新しいホームができているのがわかる。その昔牛込駅があったあたり。牛込駅は知らないが、こんな土手下からどうやって土手上に上がったのだろう。牛込駅は1894(明治27)年、市ケ谷駅は翌1895年に開業している。濠端、土手下という環境は似ているから、おそらくは似たような形状の駅だったのではないかと勝手に想像する。
想像ついで想像すると駅舎は極秘裏に建設され、外濠周辺は数知れぬ棕櫚で覆われたとか、駅舎建設中に水があふれて難工事だったとか、地熱が上がってダイナマイトが自然発火してしまったとか、隠された史実があったかもしれない。あるいは今回の移設工事に関しても神田川に流された工員が漂流者となってカムチャツカに流れ着いたかもしれない。そんなことはない。断じてない。絶対にないかと訊かれたら絶対にないとは言い切れないが、たぶんないだろう。
吉村昭のこの短編集はずいぶん以前に読んだもので、あまり憶えがない。そんなことではいけないと思うものの忘れてしまったことはどうしようもない。こんどあらためて再読することにする。

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