2017年1月3日火曜日

山本周五郎『ちいさこべ』

あけましておめでとうございます。
盆暮れ正月ではないけれど、年末年始のあわただしい時期はなかなかゆっくり本が読めない。
今までそうやってあわただしさのせいにしてきけれど、一昨年末司馬遼太郎の『峠』を読みふけり、この年末は山本周五郎を読んでいた。おもしろい本があれば、人はどんな状況下にあっても読み続けられるものだと思った。
年末年始、毎度のように思うのは年賀状。もうやめようかとずっと思っている。いただくだけいただくとして、もう出さないようにする、そうこうするうちにこうしたやりとりはなくなるだろうと。それはそれですっきりするんじゃないかと。
とはいうものの親戚づきあいというものもあり、古くから出し合っている友人・知人も多い。ここで突然止めるのもいかがなものかとも思う。そうこうしているうちに印刷して、いつものようにポストに投函している。
住む家もだんだん手狭になってきている。よけいなものは片づけてしまいたい。そんな矢先、高校時代の同級生Sからもらった1985年の年賀状が出てくる。Sは大学卒業後国鉄に就職し、長崎からキャリアをスタートした。ほどなくして北九州に移り、今や重要文化財に指定されている門司港駅の写真を賀状にしたのだ(もともと建築物に興味があったという)。
門司港駅は鹿児島本線の始発駅であるが、山陽本線との接続駅がひとつ先の門司駅だったせいか、ちょっとした盲腸線の駅のような存在だった、少なくとも時刻表を見るかぎり。でも写真で見る門司港駅は九州の表玄関然とした凛々しい佇まいを持っていた。
その賀状を捨てずにとっておいたのはそういう理由からかもしれない。
今、都会の駅は大量生産された工業品だ。駅名表示の看板さえ入れ替えればオールマイティな存在になってしまった。町の顔としての表情はもうない。
それはともかく、山本周五郎はいいな。
正義・寛容・謙虚。
読めば読むほど、今、自分に足りないものが見えてくる。じわっとしみてくる。

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