2017年1月22日日曜日

獅子文六『七時間半』

東京大阪間を在来線利用で路線検索する。
12時半出発とすると中央線で新宿に出て、特急あずさで塩尻に出て、特急ワイドビューしなので名古屋。東海道本線の在来線で米原行、さらに姫路行の快速を乗り継ぐと9時半前には大阪に着く。
特急ちどりは東京大阪間を7時間半でむすんだが、60年近く経った現在でも8時間半少々でたどり着く。さらに検索結果をよく見ると乗車時間は7時間25分とある。遠回りと思われる中央本線経由でも当時の直通特急列車よりはやい。同じレールの上を走っているようで鉄道も案外進歩している。
そういえば昔は食堂車なんていう優雅な設備があった。東海道新幹線のビュッフェでビールを飲んだことはあるけれど食堂車で食事をした経験はない。そもそも食堂車を連結した列車に乗ったことがほとんどない。上野札幌を寝台特急北斗星で往復したことがあるが、食堂車はすべて予約制で駅弁を何十食分も食べられるくらい高価なメニューだったと記憶している。
大阪へは東海道新幹線で移動することが当たり前になった時代に生きてきたのでそもそも在来線で移動することがなくなった。つい最近まで朝一番の飛行機よりはやく大阪に到着する寝台急行銀河が運行されていたが、すでに廃止されている。寝台列車はもはやビジネスツールではなく、道楽の乗物になってしまっている。
獅子文六の小説を多く読んだわけではないが、映画やドラマにするにはうってつけのストーリーが多い。この小説もご多分に漏れず1961年川島雄三が「特急にっぽん」というタイトルで映画化している。居残り佐平次のフランキー堺が矢板喜一役を演じている。
人にもよるのだろうが、列車の旅というのは得てして思い出に残るものだ。飛行機やバスも同じかもしれないけれど列車という空間には独特の空気が流れ、独特の秩序がある。そこに小さな世界があって外の世界とは隔絶されている(内側と外側をむすぶ場所として駅があり、祝祭的な役割を果たしている)。
この本はそんな小さな世界のものがたりだ。

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