2015年5月25日月曜日

京井良彦『つなげる広告』

ソーシャルネットワークの時代、広告はどう変わっていくのか。
ずいぶん以前からこの議論はなされてきて、その成果がすぐれた書籍となって世に出ている。
佐藤尚之の『明日の広告』、『明日のコミュニケーション』、須田和博『使ってもらえる広告』、佐々木紀彦『5年後メディアは稼げるか』、ロブ・フュジェッタ『アンバサダー・マーケティング』など。いずれもたいへん勉強になる。
この本もそうしたソーシャル時代の広告のあり方をさぐった本で効果的な実例が紹介されていてわかりやすい。
SNSは人間が本来的に持つ社会性を可視化したしくみで企業と生活者のフラットな関係を構築する。ソーシャルメディアはコミュニケーションという社会性の拡張であるという。衣服が皮膚の拡張、テレビ、ラジオが視聴覚の拡張であるのと同様に。
広告の役割は企業と生活者、あるいはブランドのファンをつなげること。ベストエクスペリエンス(従来のマス主体の広告は都合のいい面だけを見せるベストショットだった)が生み出す共感をコンテンツとしてそのつながりの上を自走させることがたいせつになる。
そして関係を維持継続する内発的動機を働かせるゲーミフィケーション。
どうやらテレビコマーシャルや新聞広告、ポスターの絵柄を考えるだけではなくなったのだ、広告の仕事は。次々にデジタルが生み出すテクノロジーやプラットフォームを活用して人と人、人と企業をつなげていく。もちろんCMやポスターのビジュアルもだいじなのだが、それを考えるだけではだめだということだ。
この本にも書いてあったが、昔の商売は顧客の顔が見えた。だからその関係をたいせつにしていた。いつしか大量生産、大量消費の時代になり、顔の見えない見知らぬ顧客を相手に商売をするようになった。それが今、企業と生活者、生活者同士がコミュニティをつくってつながっている。奇しくもテクノロジーによって商売の本来の姿が戻ってきた。
広告コミュニケーションは間違った方向には進んでいないと思う。

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