2011年5月3日火曜日

池内紀編訳『カフカ寓話集』


小石川富坂を後楽園あたりから上るとほどなく伝通院前の交差点に出る。
左に折れて、安藤坂を下れば、神田川。川に沿って新目白通りを下流にすすめば飯田橋、反対に行けば江戸川橋から高戸橋に出る。富坂上はちょっとした高台なので、どこに出るにも都合がいい。その反面、どの坂を下りようか、迷ってしまう。
小石川と呼ばれるこのあたりは高校時代はよく練習試合をした竹早高校や大学時代に教育実習に通った学校もあり、当時と町並みはずいぶん変わってしまっているものの思い出深い一帯である。水道橋駅や都営地下鉄の白山から歩いたこともある。もちろん丸ノ内線茗荷谷駅から来たこともある。下り方を迷うように上り方もバリエーションがいくつかある。
茗台中学校脇に石段があった。方角的には西向きだろうか。高い建物ばかりだが、目白や牛込方面が見渡せる。足下に丸ノ内線が地上を走っている。そんな風景を見ながら、一段、また一段と下りてみた。石段を下りきったところにトンネルがあった。その上は地下鉄の車庫。
カフカの「巣穴」を思い浮かべながら、トンネルを抜けた。
このあいだ池内紀の本を読んで、しばらくぶりにカフカを読んでみたくなった。寓話集と名づけられている。池内紀の名訳とはいえ、心して読まないとたちまち睡魔に襲われる。
とりたててカフカを読み込んでいるわけではないが、長編・大作のヒントが随所に隠されている小品集なのかもしれない。「皇帝の使者」は「万里の長城」を思い出させるし、「巣穴」の閉塞感は「変身」のにおいがする。
そしてトンネルを抜けるとそこには切支丹坂があった。

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