2011年5月28日土曜日

藤井青銅『ラジオにもほどがある』


BCLという趣味があった。
ラジオや海外短波放送を聴くといういたってシンプルな趣味である。放送を聴いて、聴いた場所、受信状態、受信機の種類、放送内容などを受信報告として送るとベリカードと呼ばれるお礼の(?)カードが送られてくる。その収集がモチベーションを高める。ま、そんな趣味である。“あった”と過去形にしたのは今そんな趣味があるのかわからないからだ。
小学生から中学生にかけての時期、1970年代のはじめにそんな趣味が流行った。とはいっても高級な受信機など持っていないし、うちにあった古い真空管のラジオ(5球スーパーだったと思う)では国内の短波放送を聴くのがやっとだった。当時の雑誌、誠文堂新光社の『模型とラジオ』や電波新聞社の『ラジオの製作』などを紐解くと高一中二(高周波増幅一段中間周波増幅二段のスーパーヘテロダイン方式)受信機や再生検波式受信機の製作記事が載っていて垂涎のまなざしで眺めていたものである。メーカー製ではトリオの9R59(D、DS)が高嶺の花だった。
その後ソニーがスカイセンサーというスマートなラジオを発売した。これはかなりすぐれた製品だったが、真空管仕様の“受信機”に憧れていたぼくたちには“しょせんはラジオ”な感じが拭いきれなかった。
海外短波の受信にはアンテナが重要なファクターになる。ラジオとアンテナに恵まれていなかったぼくのコレクションは結局国内のAMラジオ局とモスクワ放送、北京放送のベリカードにとどまった。再生検波受信機のキットをつくり、ささやかながらもアンテナを建てた友人のHからVOA(Voice Of America)のカードを見せびらかされたときちょっとくやしい思いをした。
藤井青銅はたぶんこれが2冊目。今となっては斜陽メディアと思われがちなラジオがかろうじて輝いていた時代に裏方としての活躍していた著者の、少しなつかしく、少しほろ苦い自慢話である。

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