2005年2月18日金曜日

清水義範『国語入試問題必勝法』

どうも1冊読んで気に入ると同じ作家の本を読み続ける傾向が僕にはあるようだ。大江健三郎も大宰も三島もベルグソンもスタインベックも比較的短期間にまとめて読んだ記憶がある。最近では筒井康隆とアーウィン・ショーがそんな作家だ。もちろんもう学生ではないからそんなに集中的に読めるわけではない。ずいぶん時間をかけている。

ここのところ気に入っている(というよりとりつかれているというべきかもしれない)のは清水義範である。すいすい読めるタイプの短編集なので平均より速いペースで読んでいる。

『国語入試問題必勝法』では表題作もさることながら「いわゆるひとつのトータル的な長嶋節」がいい。長嶋は野球の天才であり、解説者としての彼は「本能的にわかっている非常に高度なことを、なんとか説明しようと最大の努力をする」のだそうだ。それがいわゆるひとつの長嶋節になってしまう。それは長嶋の「言語能力が低いのではなく、伝えたい内容が高すぎる」からであるという。原が打てないときに「四番打者としての自覚がないからですよ」という普通の解説者とはレベルが全然違うのである。

まあほんの一例であるが清水の洞察力と創造力、そして月並みな言葉だが人間的なやさしさに感服させられる一冊である。
(1993.7.10)

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