2022年12月4日日曜日

夏目漱石『文鳥・夢十夜』

その日はいつものように12時半過ぎに布団に入った。少しだけ読みかけの本に目を通したが集中できなかったのでイヤホンを耳にさしてラジオをつけた。ラジオ深夜便が世界の天気を伝えている。もう1時なのだ。
目が覚める。外はまだ暗い。ラジオから音はしない。いつも2時間で電源が切れるように設定してある。時計を見る前にラジオをつける。君が代が流れている。続いてスペイン国歌。まもなくカタールワールドカップ一次リーグE組の最終カードがはじまる。起きてテレビ観戦するのもありかなと思いつつ、そのままラジオで聴く。
スペインが先制する。ラジオで聴いている限り、さほど興奮することもない。静かに試合の流れを追う。ハーフタイムを迎える。トイレに行って口をすすいで、布団にもぐり込む。後半がはじまった途端に同点。ここでテレビ視聴に切り替える。テレビをオンにする前にラジオでは逆転ゴールを伝えていた。
夏目漱石晩年の中短編を集めた新潮文庫を読む。胃を患った漱石が痛々しい「思い出す事など」や「文鳥」「永日小品」など歳を重ねたせいか、身体が弱ってきたせいか、心やさしいおだやかな漱石がいる。
日本対スペイン。後半早々逆転に成功したものの、残り時間はまだ40分近くある。負けているときの45分はあっという間だが、リードしていると長い。ボールを支配するのは圧倒的にスペイン。日本が守りに入ったわけではなく、スペインの方が個人技や組織プレーでは格上なのだ。逆転後、はらはらするために起きてテレビの前に座ったみたいだ。アディショナルタイム7分を含めた逆転劇後のゲームを固唾を飲んで見守った。危ない場面もあったが、なんとかリードのまま試合終了。無敵艦隊スペインにワールドカップで勝利するなんて、日露戦争以来の快挙ではないかと思う。
時刻はもうすぐ午前6時になろうとしていた。ここで目が覚めて「夢だったのかと」とならなくてよかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿