2022年10月3日月曜日

太宰治『きりぎりす』

軽井沢ではNさんという方が現地の案内をしてくれる。
7月はじめに訪ねたときは浅間山と離山が望める気持ちいい場所というリクエストに対して、見晴台(長野と群馬の県境にある)まで案内してくれた。そしておいしい蕎麦屋に連れて行ってくれた。僕が蕎麦好きであるという情報がどこからかインプットされていたのかもしれない。
7月末に行ったときには横川駅まで連れて行ってもらった。碓氷峠鉄道文化むらでたくさんの鉄道車両にかこまれて楽しいひとときを過ごした。碓井峠のめがね橋も見ることができた。そして信濃追分のおいしい蕎麦屋に案内してくれた。
鉄道車両や鉄道遺産が好きな人だと思ったのだろうか、9月のはじめ、三回目の訪問時には北軽井沢駅に行ってみませんかとNさんから提案される。昔、軽井沢と草津をつなぐ草軽電鉄という路線があった。その駅舎がまだ遺されているという。
木下恵介監督「カルメン故郷に帰る」を思い出す。日本初の総天然色映画である。
浅間山のふもとで育ち、東京に出てストリッパーになったリリィ・カルメンが帰郷してひと騒動を起こすといった娯楽映画。主演の高峰秀子が草軽電鉄で北軽井沢駅到着する。現存する駅舎には当時のおもかげが残る。Nさんはこんど機会があったら観てみたいと言っていたが、木下恵介監督、高峰秀子主演の映画を観るなら「喜びも悲しみも幾年月」「二十四の瞳」もおすすめだと伝えた。
新幹線のなかで太宰治の短編集を読む。中期の秀作短編集というところか。「姥捨」「畜犬談」「善蔵を思う」「佐渡」などなど。甲府で結婚し、やがて三鷹に落ち着く。この時期の太宰は生涯のなかでも安定した一時期だった思う。
北軽井沢に向かう途中、白糸の滝も見ていきませんかとNさんが言う。いわゆる観光名所には興味がなかったが、案内してもらってよかった。自然は偉大なアーティストだと思った。この日もNさんはおいしい蕎麦屋に案内してくれた。

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