2020年9月28日月曜日

カンヌライオンズ審査員著 PJ・ペレイラ編/鈴木智也監修・訳『ブランデッドエンターテイメント お金を払ってでも見たい広告』

そもそもがブランドとは何かという定義が難しいのに、「ブランデッドエンターテイメント」などとなると簡単にはイメージできない領域である。小霜和也によれば、ブランドとは「気持ちいい記憶」と定義される。なかなか的確である。
この本はカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの2017年ブランデッドエンターテイメント部門の審査員によって書かれている。ブランデッドエンターテイメントとはエンターテイメントコンテンツにブランドのメッセージをのせて顧客に届けるコミュニケーション手法のことだ。
テレビコマーシャルのように強制的に視聴される動画ではなく、むしろ能動的に視てもらえるコンテンツ。著名人に無理矢理商品やサービスを語らせることもなければ、画面に大きくロゴマークが映し出されることもない。秒数など時間の制約もない。視聴者にエンターテイメントを楽しんでもらうのに15秒も30秒もないのだ。2分のものもある。15分を超える短編映画もあり、2時間近い作品もある。その後映画化された作品もある。2015年に公開された韓国映画「ビューティー・インサイド」がそれだ。
ストーリーが重要であると同時に、ブランド自体がしっかりした考え方を持っていなければならない。そうしたポリシーがあってはじめて多くの共感を得ることができる。カンヌライオンズの一週間にわたる審査を通じて、多くを学んだ審査員たちがそれぞれの視点ですぐれた作品のポイントを語る。読みながらYouTubeで該当作品を視聴する。なかなかいい勉強になる。横書きの本は苦手なのだが、ついつい読み切ってしまった。
自分でブランデッドエンターテイメントなるコンテンツをつくる機会があるかどうか。本書に登場してくるようなすぐれた作品ができるかどうか。たぶんもうそんな作品制作に携われないかもしれない。そういった意味でこの本は、僕にとって『真空管アンプの製作』に近い。

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