2019年10月16日水曜日

小木曽健『ネットで勝つ情報リテラシー --あの人はなぜ騙されないのか』

先日の台風19号で東京近郊多摩川沿いの某所で冠水し、被害が出た。
高層マンション地下の電気設備に被害が出、エレベーターが使えなくなり、下水処理施設も被害を受けたため自室でのトイレ使用を禁止して、各階に設けた仮設トイレを使用するよう通達されたというのだ。これが「うんこ禁止令」と称されて、Twitterで拡散される。なかでも被害を受けていないにもかかわらず、そのマンション名がブリリアというだけで「計画停便」とはやし立てられる。SNSおそるべし、である。
ネット以前の時代ならこういった風評は長い時間をかけられてひろまっていっただろうが、誰かが書き立て、おもしろおかしくコメントされて拡散されるSNSの世界では1~2日で全世界にひろがる。件の某所のイメージは地に落ちる。「お住まいはどちらですか?」「某所です」「はああ…」といったやりとりが目に浮かぶ。
その一方で先月の台風15号による千葉停電の際には、被災地を見舞う声や支援を呼びかける書き込みが多く見られ、Twitterはやっぱり素晴らしい情報ツールだと思った。その矢先だっただけに残念である。今回の台風19号はさらに広範囲に甚大な被害をもたらしている。被災地ではきっと有用な情報が流布されていると信じたい。被害があまりにも大きすぎたせいで、ツッコミどころを失ったネットの野次馬たちがここぞとばかりに掘りかえしたのがこの某所だったのだろう。やれやれである。
ネットの情報は玉石混淆と言われている。定義が曖昧なまま、出典が定かでないまま、あっという間に拡散される。思い違いも不定見もどんどんひろがっていく。飯田泰之『ダメな議論』と内容的に似ているが、実例が豊富でわかりやすい(おもしろさは別として)。すべての情報は発信者の思い込みや偏りが含まれているから真実も本当もないただの情報だという。肝に銘じてフェイクニュースに立ち向かわなくちゃいけない。

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