2018年8月20日月曜日

吉村昭『魚影の群れ』

夏のお盆休みを南房総で過ごすようになってもう何年にもなる。
東京がどんなに猛暑でも南房総は朝晩には涼しい風が吹き、しのぎやすい、というのが例年のパターンだったのだが、今年は違う。まるで東京にいるように暑い。夕方陽が翳ってもすぐには涼しくならないし、朝は太陽が昇るとさっそく暑くなりはじめる。ここ何年かの猛暑化傾向は外房の海辺の町にまで押し寄せている。直射の日差しが痛いくらいだ。
昔からエアコンはなかった。あるのは商店くらいで昔ながらのつくりの家でエアコンを付けているところはほとんどない。必要がなかったといえばそれまでだが、最近の住宅は建材や断熱材の関係か熱がこもるらしく、取り付けている家も増えたと聞く。
隣町には母の生家があり、墓地もある。毎年墓参りに訪れる。従兄の家に立ち寄って線香をあげる。さすがに今年は暑いからといってエアコンを取り付けたという(取付工事までしばらく待たされたらしい)。アイスコーヒーをごちそうになり、久しぶりにエアコンの風を浴びた。
『魚影の群れ』は4年前に読んでいる。吉村昭の第一次産業もの(と自分で勝手に分類している)である。おさめられている短編の中では宇和島のネズミ騒動を題材にした「海の鼠」の印象が強かったが、今思い出されるのは表題作である。多分に相米信二監督の映画の影響が大きいかと思う。青森大間のマグロ漁師緒形拳もさることながら、当時新進気鋭の佐藤浩市、本格的な女優になりつつあった夏目雅子が今でも印象に残っている。
南房総で夏を過ごしていると親戚や近所の人からイセエビやアワビ、サザエなどをいただく。千葉のイセエビは豊漁が続いていて、本場三重県よりも漁獲高が高いという年もあるという。10分ほど塩茹でするだけでおいしく食べられる。
イセエビはえび網を仕掛けて獲るという。そこにはマグロを捕らえるのと同じようなドラマがあるのではないかなどと想像をたくましくしてみる。

0 件のコメント:

コメントを投稿