2017年12月5日火曜日

本田創、高山英男、吉村生、三土たつお『はじめての暗渠散歩:水のない水辺をあるく』

区境に興味があった。
たとえば東京メトロ千代田線の根津駅で下車する。不忍池に注ぐ藍染川が暗渠となっている。台東区と文京区の区境だ。さらに北へ、日暮里方面に向かう。文京区は荒川区と接する。谷中のあたりでは荒川区と台東区の区境がある。田端の方に歩いていくと文京区は北区とも接する。近隣には谷中銀座なる商店街があるが、かつて藍染川が流れていた暗渠の道は区境銀座だ。
豊島区と板橋区を分けるのは谷端川。これも暗渠になっている。東京23区を区切る川や水路がいかに多かったか、歩いてみるとわかる。そもそもが東京は川だらけの町だった。
銀座などはその典型的な町だ。人工的な川が多かったとはいえ、四方を川に囲まれていた。橋のつく地名が多い。銀座と有楽町、新橋、築地、京橋はいずれも川で隔てられた町である。
今、仕事場は築地にある。采女橋あたりで南東方面に枝分かれする築地川(今では首都高速道路)の支流沿いだ。目の前が川だったと思うとちょっとわくわくしてくる。築地川の支流は交差点にだけその名をとどめる市場橋を越え、築地市場の中を流れる(いや、もう流れてなんかいない)。
築地川はもう少し上流、新富町の三吉橋のところでも支流に分かれる。こちらの支流は築地本願寺の裏手を流れ、晴海通り沿いにわずかに痕跡を遺す門跡橋、小田原橋をくぐって、築地市場で先の支流と合流する。そしてアーチ型の海幸橋(残念ながらもう撤去されている)の先で東京湾に注ぐ(だから注いじゃいないって)。
築地市場にお昼を食べに出かけたついでこの辺りを歩く。まるでそこに川が流れているかのように想像しながら。
実に楽しい。
水のなくなった水辺に惹かれる人が多いというが(本当か?)、僕はどちらかというと行政区分への興味から暗渠に関心を持つようになった。
かつて川が流れていた流路の写真を撮り、Facebookのアルバムに整理した。
「川はどこに行った」というタイトルを付けた。



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