2015年2月6日金曜日

吉村昭『事物はじまりの物語』

先日のつづき、塩浜のスタジオ三日めの話。
午後には仕事が片づいた。夕方までかかるかもしれないと思っていたので時間が空いた。その日は寄り道をしなかったので、帰りに道草を食うことにした。
木場から洲崎に向かう。
途中、成瀬巳喜男監督「稲妻」で高峰秀子がわたった新田橋を見る。当時は木橋だったが、今は赤く塗られた鉄の橋だ。空橋ではない。その下を大横川が流れている。
洲崎大門通りをまっすぐ進む。映画「洲崎パラダイス赤信号」で夢の島埋め立てのため砂利運搬トラックが何台も走っていく大きな通りだ。大門通りの突き当りには運河が残されている。橋をわたると住所はやはり塩浜で東京メトロ東西線の検車場があり、その向こうにJR東日本資材センターがある。かつての越中島貨物駅。小名木駅を経て、新小岩駅、金町駅方面に主にレールを供給しているそうだ。
塩浜から運河をひとつ越すと枝川(ここに架かるしおかぜ橋というのがなかなか気持ちいい)、もうひとつ越えると潮見、さらに越えると辰巳ともうどこまでが深川なのかわからない。このあたりは倉庫があって、できたばかりの公園や集合住宅、学校があって匂いとしては品川区の八潮とか大田区の平和島に近い(直線距離も近い)。辰巳は深川のさいはて(辰巳を深川と呼んでいいとすればの話だが)で、その先に今のところ地面はなく、東に新木場、西に東雲がひかえている。東雲といったらもうお台場だ。
吉村昭は作品も見事だけれど、そこにいたるまでの調査がすばらしいといつも思っている。丹念に資料と向き合い、多くの人に会い耳を傾けている。そして新たな発見に出会い、想像力という細い糸で紡いでいく。うらやましい仕事だと思う反面、自分にはとうていできまいというあきらめの気持ちにも包まれる。
ということで洲崎から東京メトロ有楽町線辰巳駅までずいぶんとたくさんの道草を食ってしまった。昼食がサンドイッチと軽かったのでちょうどよかった。

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