2015年2月18日水曜日

苅谷剛彦『知的複眼思考法』

最初の床屋は「富士」だったと思う。
実家から子どもの足でも2~3分の距離だった。もちろん子どもの頃の記憶だからまったく正確ではない。どのくらい子どもだったかというとおそらく母に連れられて、預けられて髪を刈られて、天花粉(ベビーパウダーとかおしゃれな呼び方ではなかったと思う)を塗りたくられて、帰りにお菓子をもらって帰った。そのくらいの子どもの頃だ。小学生の頃まではそこに通っていた。
中学生になって、床屋に行かなくなった。もちろん学校の規則はあったけれど、他の中学のように刈上げなければいけないとか細かいことは言われなかったせいもある。多少長めでも問題はなかった。ちょっと伸びると少しだけ剃刀で削ぐ程度にした。母の知合いで近所に元美容師がいて、母がその人の自宅でカットしてもらうついでに行って、切ってもらった。以後3年間、そういうわけで床屋には行かなかった。
姉の同級生で美容院の娘がいた。いちどその店でカットしてもらった。姉がカットしてもらうとき、やはりついでのように付いて行ったのだと思う。
短絡的な思考をする者がいる。若いものに多い。僕ももう若くはないが、ものの考え方は短絡的だなと思うことがしばしばある。
この本は「複眼的な思考」を促している。ものごとを一面的に見るのではなく、多面的にとらえる。空間的にも時間的にも。おそらく想定している読者は若い世代、とりわけ大学生あたりか。ああ、こうやって問題をとらえなおして、ひとつひとつ丁寧に解明していけばきちんとした意見になるのだなと読んでみてよくわかる。
ただ、自分が学生時代にこんなに懇切丁寧な本を熟読したかどうかはわからない。何を大人が偉そうに、と思ったかもしれない。何かするのに最適なタイミングというのが人生にはある。しかしながら自分自身でそれを見きわめるのは難しい。
そういえば冨士のお兄さんは三原綱木に似ていた。ジャッキー吉川とブルー・コメッツでギターを弾きながら踊っていた三原綱木に。もちろん当時の記憶だからまったくあてにならない。

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