2011年2月20日日曜日

村上春樹『村上春樹雑文集』


庭にツグミがいた。
ツグミを見るのは空き地や農閑期の畑などだだっ広いところが多いので、猫の額のような庭にいるのがなんとも不似合いである。ツグミもそれとすぐに気づいたのか、またたく間に飛び去って行った。ツグミの凛として、背筋の伸びたその姿勢が嫌いではない。
今住んでいる場所に引っ越してくる前は駅まで30分ほどかけて歩いていて、そのときさまざまな野鳥に出会った。さまざまといっても東京の住宅街で見かける野鳥といえば、ヒヨドリ、ムクドリ、メジロ、ハクセキレイ、くらいのものであるが。夏のツバメ、冬のツグミはやはり季節を感じることができてうれしい鳥たちだ。
この本は“雑文集”ということでレコードのライナーノートや文学賞の受賞のあいさつ、翻訳版刊行の序文など、さまざまなジャンルの雑文からなる。雑文といっても駄文ではない。ひとつひとつがウィットに富んでいる。ぼくはジャズなどほとんどわからないし、彼が翻訳紹介した作家の本もすべて読んでいるわけではない。チャンドラーでさえ読んでいない。それでも楽しく読めたのが不思議だ。
長編小説が村上春樹にとってのメインストリートだとするとちょっとした路地裏や横丁集といった色合いの本とでもいえるだろうか。
もともとユーモアの感覚に富む人だから、カジュアルな文章は読んでいて楽しいし、またある意味偏屈な人でもあるので小説のことを語らせると奥が深い。まじめな人なんだなと思う。
ちょっとした町歩きのつもりで読んでいたら、いとこの名前が出てきた。裏道でばったり出くわしたみたいな感じだ。

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