2008年7月23日水曜日

湯本香樹実『春のオルガン』

子どもの頃、日本は卓球が強かった。
小学生のとき、名古屋で世界卓球選手権が開催され、テレビでも中継された。日本は前回の大会で伊藤繁雄が男子シングルスで優勝していたし、その前はシェーク一本差しという個性的なグリップで豪快なドライブを決める長谷川信彦が優勝していた。そのころ子どもだったのでよくわからなかったが、中国が世界選手権に参加していなくて、それでも定期的に開催される日中対抗戦では当時荘則棟という前陣速攻のおそろしくスピードのある選手が日本選手を打ち負かしていた。で、そうそう、少し思い出してきた。名古屋大会から中国が世界選手権に復帰したんだ。それで日本人選手による男子シングルス3連覇の前に中国選手が立ちはだかるものと予想されていたんだ。でも、結果はベンクソンというシェークを振り回すヨーロッパスタイルの選手が連覇をねらう伊藤を破って、何十年ぶりかでヨーロッパにタイトルを持ち帰ったんだ。
伊藤繁雄という選手は台から離れて豪快なフォアドライブを連打する選手で、ほとんどバックは使わない。たまにショートで返すことはあるけれど、とにかく右へ左へフットワーク巧みに動き回ってそのフォアハンドから強烈なドライブを打ち込んでいた。
ぼくらの卓球仲間はほとんどがペンのドライブ型をめざした。中には当時流行りだしたシェークハンドグリップでヨーロッパスタイルを模す者、円いペンホルダーに表ソフトラバーを貼って、前陣速攻を目指す者もいたが、主流派はなといってもペンのドライブ、伊藤繁雄のスタイルだった。それはぼくたちが体育館を使って卓球をするという環境的に恵まれていたせいもあった。
後に校庭開放日が少なくなるとぼくらの卓球場は児童センターとか児童館と呼ばれた区の施設になる。そこは当時東京からなくなりつつあった空き地や広場みたいな遊び場の代替品のような施設だった。

なんの話だっけ?
ああ、湯本香樹実の『春のオルガン』だ。
ぼくには姉がひとりいて、けっこうなついていた。自分でいうのも変だが、ずいぶん姉思いの弟だった。だからってわけじゃないが、ちょっとかしこくって、素直な弟が登場人物としていると、「これって、おれっぽくね」みたいな見方で読んじゃうんだよね。
それにしてもこの作者、じいさん書かせたら日本一だね。


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