2025年9月25日木曜日

半藤一利『幕末史』

昭和100年ということで今年は昭和に関する本を多く読んだ。そろそろ飽きてきたので少し時代を遡ろうと思う。というわけで幕末史。
学生時代からきちんと日本史を学んだ覚えがない。歴史の本を読むこともあまりなかった。とりわけ幕末から明治維新にかけてはランダムに並べられた事件を順番通りに並べ替えることができない。そもそも幕末とは何なのか。朧気ながらペリー来航から士族の反乱が平定される西南戦争までかと思っていたが、半藤先生も同様にお考えのようである(ほっとした)。要するに黒船による武士たちの動揺にはじまり、維新を経て武士が全滅するまでが幕末ということか。
多くの人は幕末を歴史書からではなく、小説から学んでいると思う(映画やテレビドラマからという人もいるだろう)。長州なら『世に棲む日日』、竜馬なら『竜馬がゆく』、新選組なら『燃えよ剣』など司馬遼太郎の作品を通じて幕末を身近に感じた人も(僕も含めて)多いだろう。吉村昭なら『桜田門外ノ変』、『生麦事件』、『天狗争乱』、『落日の宴』、『彰義隊』などから幕末を学べる。
幕末は佐幕派と討幕派の対立がベースにある。佐幕派が主役の物語では討幕派が敵役となり、討幕派が主役ならその逆になる。薩摩長州土佐を中心とする西軍(官軍ではなく)が東征し、佐幕諸藩を平らげることで権力を掌握したというのが一般的な幕末史の解釈である。半藤先生はこれを薩長史観として批判し、江戸東京を中心とした歴史認識を示す。幕府側にも慶喜、勝海舟らは日本のビジョンを持っていた。江戸市内で戦場が上野だけに止まったのは彼らの尽力による。にもかかわらず西軍は武力にこだわり、この国を新たに侵略していったのである。
それにしても半藤先生がカレンダーをめくるように一つひとつの事件を解説し、つなげてくれたおかげでようやく幕末史を一望することができた。維新と昭和の終戦を重ね合わせる見方もおもしろかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿