2021年2月12日金曜日

鷹匠裕『ハヤブサの血統』

JRと東京メトロの荻窪駅を下りて、青梅街道を西に向かう。20分ほど歩くと郵便局があり、警察署が見えてくる。その先は商業施設とマンション群。
ここに日産の工場があった。2001年に郊外に移転され、再開発がはじまった。日産自動車の工場になる以前は1925年につくられた中島飛行機東京工場。おそらく戦前戦中の地図には記されていなかっただろう軍需拠点だった。
中島飛行機はその名のとおり、飛行機とエンジンをつくる会社である。広大な敷地の隅に「旧中島飛行機発動機発祥之地」と刻まれた碑が立っている。2011年、警察署の裏手(北側)に桃井原っぱ公園という広場が生まれた。どれほど広い敷地だったのか、周囲をぐるりと歩いてみるとわかる。そしてこの公園は災害時にヘリコプターの緊急離発着場としても使用されるという。時代が移り変わっても、空とつながっている土地なのである。
中島飛行機は数多くの戦闘機とそのエンジンを開発してきたが、最も知名度が高かったのは一式戦闘機、通称「隼」ではないだろうか。この本のタイトルにある「ハヤブサ」である。
鷹匠裕2冊目の長編小説になる。
デビュー作の『帝王の誤算-小説 世界最大の広告代理店を作った男-』は、著者にとっても僕にとっても同時代同業界の物語だった。創作の域を越える臨場感があり、ハラハラドキドキしながら読んだことをおぼえている。
今回は自衛隊の次期主力戦闘機の開発にまつわる話。
鷹匠裕は以前、自衛隊の次期主力戦闘機選びを題材に「ファイター・ビズ」という小説を書いている。城山三郎経済小説大賞の最終候補作にまでなった作品である。残念ながら、まだ読んでいないけれど、おそらくは今回の長編のベースになったものではないかと推測する。
中島飛行機は1938年に武蔵野製作所を開設している。主に陸軍向けのエンジンを組み立てていたという。「ハヤブサ」に近いのはこちらかもしれない。こんど歩いてみたい。

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