2020年12月17日木曜日

穂村弘『にょっ記』

ついこないだまで暑くて暑くて仕方なかったのに、気がつくと急に寒くなっている。
昼間は陽あたりのいい場所で仕事をしているので天気さえよければ堪えられる。夕方になると暖房を入れる。それでも寒いので自衛手段として厚着をする。シャツを2枚重ね、セーターを着て、ウインドブレーカーを着て、ライトダウンを着込む。ちなみに今日からタイツも履いている。
明治生まれの祖母センは、ずっと千葉県南房総市千倉町の白間津という集落に住んでいた。当時は千葉県安房郡七浦村白間津。関東大震災も、先の大戦も、明治大正昭和のあらゆる歴史を白間津で経験した。
最晩年、目を患って東京の伯父の家に連れてこられた(このことは前にも書いた気がする)。
祖父は戦後すぐに病死している。5人の娘が嫁いで、長嶋茂雄が栄光の巨人軍に入団した昭和33年、叔父(次男)が高校進学のために上京する。それからおそらく20年近く、ひとり暮らしを続けてきた。
あるとき、伯母に出かける用事があって、母が留守番がてら祖母の世話をしに、伯父の家を訪ねる。こたつに入って、ぼんやりしているのもなんなので母は、祖母をお風呂に入れようと思い立つ。祖母もそうだったらしいが、母も無為に時を過ごすことは損だと思っている。湯を沸かし、浴室まで連れていく。着ているものを脱がそうとしたら何枚も何枚ものシャツを重ね着していたという。お風呂に入れるより、入れるまでがたいへんだったと母が笑いながら話していたのを思い出す。
慣れない東京。息子の家で世話になっているのが心苦しく、せめて風邪などひくまいと思っていたのかもしれない。昨日風呂に入るとき、何枚も何枚も重ねて着ていたシャツやセーターを脱ぎながら、祖母を思い出した。
穂村弘という著者をまったく知らなかったが、角田光代がおススメするので読んでみた。
ちょっとした発見がうれしい。どうでもいいようなことを思い出させてくれるところがうれしい。

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